――それを美しいと、思うことは許されないのでしょうか。











まずは、彼のことについて軽く説明しよう。
彼は、四代目火影の息子だ。
歴代でも特に優秀だと言われる四代目の息子はその期待を裏切らず幼少のころから忍びとしての優秀な素質を発揮していた。
アカデミーでは年上に囲まれそれでも主席で卒業し、その翌々年には中忍試験を合格。そして14歳にて上忍に就くという超スピード出世。
あまりに若すぎるために、しばらく下忍の担当に就くことはなかったが、受け持つ任務はほとんどがAもしくはSクラス。
火影や他の忍びたちからの人望も厚く、そのことからわかるように人当たりも良いし、おごらず、自分のすべきことはしっかり自分でやり、できることなら周りのフォローもする。
ある時は失敗もするが、それを乗り越えれるだけの強さも持っている、誰もが好感をもてるような人物だ。
優秀な人間にしては珍しくねたまれるようなことは少ない。
それが、という人物だ。







今日は待ちに待った対面の日。
あれから20年ちょっと。ずっと会いたいと思っていた相手と会えるってことで、僕は前日から、いや、会うことが許されたときからそわそわしていた。
何人かが僕に隠れて様子を探っているのにも気にならないほど僕は浮かれている自覚がある。
待合室に設置されているやわらかいソファーに沈み込みながらいてもたってもいられずに暗器の手入れをしてみたり。
でもなかなか集中できなくて逆にそれを痛めそうだったのですぐにしまいなおした。
視線はどうしてもこの部屋のドアに向かってしまう。
早く来い、早く来いと念じる自分の顔はどうなっているんだろう。
無意識に思考を口に出していることに気付いたころ。待ち人の気配が近づいてくるのを知った。
しかし、それに付随してくる数人の気配にも気付いたが。


(なんだぁ・・・、感動の再会は二人きりでさせてくれないのかぁ・・・)


歓喜する感情の隅で少しだけ残念に思う。
がちゃり、とドアが開く。
そして、その姿を認めた瞬間、今までせわしなく動いていた体と頭がフリーズした。


「初めまして・・・。うずまきナルトです」


金の髪、青い瞳、それは自分の持っているパーツと同じはずなのに、どうしてこうも輝いて見えるのか。
頬の痣も、どこかおどおどしている態度も、密かに冷ややかに探るような視線も。
挨拶をしても反応の無い僕をいぶかしんで彼を連れてきた人が声をかけてきたけど、僕は耐えるのに必死だった。


「あ、の・・・さん?」


ナルト君の声。
ブツリ。何か音がしたような気がした。


「っっっかわいっ!!いやきれいっ!?っっとにかくいいや!!ナルト君ホントに僕と血繋がってるのねぇ!?うわ、髪サラサラ肌スベスベもっちり若さなのかなこれってあぁなんでもっと早くあわせてくれなかったのかなぁ火影さまナルト君をもっともっとたくさん愛でたかったのにーーー!!1」


あ、1が紛れ込んでる。
どっからか天の声が聞こえたような気がするけど無視!!
もたれかかってくるナルト君の体をさらに抱きこんで・・・ってはっ!!?
あわてて体を離すとナルト君は顔を真っ赤にしてふらふらに。


「ご、ごめんね?痛かった苦しかった暑苦しかった僕のこと嫌いになっちゃった!?」
「・・・し、死ぬかと思った」
「わー!!ほんとにごめんー!!」


しょっぱなから暴走してどうするんだ僕!!
いやだってあまりにナルト君が想像よりもいろんな意味で上回って痛んだもの。
あぁもうホントに一体なんで実の兄弟と対面するのに20年も周りから引き離される羽目になるんだろう。
や、一応原因というか理由は察しているんだけどね、周りの思惑とか自分への疑惑というか・・・。
でもおかげで僕も四捨五入で三十路という年齢に達してしまったよ。
ちょっとばかし殺意が沸いてもおかしくないよね。
兄弟の間に殺気は不似合い。喧嘩ならともかく感動の再会にそれは必要ない。
ナルト君の顔色と呆気に取られていた回りの空気が落ち着くのをまって、僕はにっこりと笑って自己紹介した。


「はじめましてナルト君。君の兄にあたるです。仲良くしていこうね、よろしく」
「は、はぁ・・・。よろしくお願いします」


敬語なんていらないしまだ固い気がするけど、まぁまだ初対面だししょうがないよね。
苦笑して、一緒に話がてら食事に行こうということになった。

げ。

まだ監視がついてくるわけ?
僕にはばれてないと思っているのか、こそこそとついてくる人数はさっきよりも増えたような気がした。
え?木の葉の忍びってこんなにも暇あったっけ?
確かこの前人手不足って単語を聞いた気がするんだけど。
ってかもしかして最後までついてくる気じゃないだろうね?








色々な話をした。
仕事の生臭い話はさすがに料理をまずくする可能性があるからしなかったけども友人や火影のこと(笑える話から愚痴っぽくなったりした)、何が好きかとかどうしても苦手な爬虫類とか(特に蛇が嫌いなんだって、しつこいからって言ってたけど・・・?)、ナルト君自身の噂についてとか(少しずつ里の信用を得ていることを僕は知ってる)、恋人の話とか(慌ててその存在を否定されたけど)、ナルト君が時代火影候補に上がっていることとか(僕も上がっているってことを今日初めて聞かされたから驚いた)。
相変わらず複数の視線が一時も離れずに突き刺さっていたけれどもなかなか充実した楽しい時間を送ることができた。
お昼時に入ったはずの空は、出店するころには赤く染まっている。


「そうだ」


ぽん、と今思い出したように手を叩く。
実は監視の目を離れたら切り出そうと考えていたのだけれどもどうやらホントに最後までついてきそうだったので今ここで切り出してしまうことにした。


「どうした?」
「ナルト君、ナルト君。僕一度だけやりたいことがあるんだったよ」
「?何を?」


首をかしげて聞いてくるナルト君の最初のころの固さは見当たらない。
これも腹を割って話し合った成果だねッ!!(ぐっ)
あ、ちょっと誰かさんの顔を思い出したかも・・・。
僕はあんなになるのはごめんだから忘れたことにしておこう・・・。


「ちょびっとだけ、おんぶさせて?」
「・・・は?」


引きつるナルト君と気配ごと硬直した監視者。
僕は両方に気付かないふりをして背中を向けてしゃがんだ。


「兄弟でおんぶにだっこーってちょっと憧れてたんだよね。早く早くー」
「・・・まじで?」
「まじで」


戸惑いながらも乗ってくれるナルト君の足を抱えて立ち上がり、軽くジャンプして抱えなおした。
うーん、細いなー。軽いし。ちゃんとご飯食べてるのかなー?
さっきの食べっぷりだと食が特別細いってわけでもなさそうだし。
ま、それはまた後でいっか。


「んじゃ、舌をかまないように気をつけてね?」


注意して、監視から逃れるために最初の一歩から全力で走った。
ナルト君の悲鳴というか、叫び声で一瞬耳がおかしくなったのは秘密。










到着したのは自分の家。
密かに作った地下室のドアを閉めて、さらに鍵をかけてナルト君を背中から下ろす。
疲弊した様子の弟ににっこりと笑った。
なぜか僕がおんぶして全力で移動すると大抵の忍びさんたちが気絶しちゃうんだよね。
ってことはナルト君はそこらの忍びたちよりもずっと実力があるってわけだ。
うんうん、さすが僕の弟。


「・・・で、何がしたかったんだ?」
「あ、そうそう。お願いがあるんだ、ナルト君に」
「お願い?」
「そ、服脱いで?」
「・・・・・・は?」
「だから、脱いで?」
「い、嫌だってば。なんか、身の危険を感じるってばよ」
「ナルト君、大切な弟に危険な目にあわせないってば。ならちょっとお腹だけ見せてね」


口癖?みたいなものの拒否スルーして(ついでに不穏な言葉もスルーして)シャツの裾を捲る。
僕はわくわくしていた。
見事にうろたえるナルト君にさらなる要求をする。


「チャクラ練ってさ、封印式見せてよ」
「・・・・・・どうするつもりってば?」
「いいからいいから」


ナルト君の悪いようなことはしないって。
しばらくお腹を凝視して、封印式が現れるのを待つ。
あ、ナルト君って結構いい筋肉の鍛え方してるね、腹筋がきれーに割れてるし、脂肪もとりあえず見当たらないし。
頭上でナルト君の溜息。どうやら僕の『お願い』を聞かないとずっとこの状態のままだということを悟ったのかもしれない。
じわりと浮かびあがる術式。
その芸術的なまでに完璧なそれに、目を細めてまじまじと観察してしまう。


「へぇ・・・この中に九尾が・・・。父君もよくこんなのやったもんだねー。九尾の怒りに耐えるの、さぞかし大変だったでしょう?」
「・・・ッ」


顔を近づけながら話すと反射的に距離を置こうと思ったのか身じろぎする。もちろん僕はそれを許さずに片膝をつき、腰に手を回してそれを阻止した。
それにもビクリと大げさなまでに体を震わせたけど無視して、封印式にキスをしてから額とを合わせた。
さて、20年越しの再会を楽しもっか♪


「何、を・・・?」
「ちょーっとお邪魔するよー」
















俺の実の兄、という男はわけのわからない人物だ。
父・四代目を九尾事件で亡くし、そのことでかなり俺のことを憎んでいるだろうということで会うことは許されなかったのを、俺が20歳になって周りの人たちに認められてきている中、本人の強い希望を持ってこの機会は与えられた。
会う前までは俺のことをどんなに口汚く罵倒するだろうかとか、攻撃をしかけてくるだろうかとか、どれだけ普段の紳士ぶり(噂は放っておいても入ってくるため大体の人柄は知っている)が壊れるだろうかとかちょっと楽しみにすら思っていたのに実際に会ってみると人の良さというか俺への溺愛っぷりというか・・・、まぁ予想していたのとは真反対どころかねじれの位置にまで違うものだった(どうやら異空間くらいとかそんなところを表現したいらしい)。
そして俺のことを心配して気配を消してついてきてくれていた同期たちにも簡単に気付いたらしく、食事の後俺を軽々と背中に乗せて一人残らず追跡を振り切る。
あれだけの追跡をこんなに簡単に振り切る、それだけでもという人物がかなりの実力があることが伺いしれる。

・・・別に簡単に乗っけられてプライドに傷つけられたわけじゃないけど複雑だ。
この年になってまでおんぶって・・・。

いや、それよりも今までの楽しかった時間はもしかして俺を油断させるための演技だったのかもしれないとも疑ってしまう。
信用したところを裏切って、その手で俺を殺すつもりなのか。
だって、彼には十分に俺を憎む理由がある。
彼の父(同時に自分の父でもあるのだけれども)を殺す原因になってしまった九尾をこの身に宿しているのだから。
そのせいで、里中から忌み子として扱われていたのだから、彼だって、俺のことをそう思っていてもおかしくはない。
だけど、なら今の状況をどう判断すればいいんだろう・・・(あまりに混乱していて今過去を振り返っていたことに気付いた)。

血の繋がった実の兄、が俺の腹におでこを当てたまま静止している――。

いや、性格に言えば腹にじゃなくて腹に在る封印式に、か?
その気になれば簡単に振り払うこともできるだろうが、なんとなくそれをすることができない。
まったく、服を脱げと言われたときには違う意味で襲われるのかと思ったけど・・・これはこれで困る。
今頃同期の奴ら、血眼になって俺らを探してるんだろうなー。とぼんやりと現実逃避をしかかったところでピクリとが動いた。
大体30分くらい抱きつかれてたかな。
腹にあったぬくもりが離れて急に冷えたような気がして捲っていた裾をおろす。


「だから一体何をしたかったんだ?」


ぽんぽんと服ごしに封印式を叩くに聞くと、それはもうこれ以上なさそうな満足げな笑顔。
心なしか瞳がウルウルしてるような・・・。


「うん、ナルト君の中にいる九尾と会ってきたんだー。攻撃されてばっかでロクに会話できなかったけどね」


――絶句。
しかも続けては今度は名前を聞いてみようかなー、と、まるでハートを巻き散らかさんとするばかりの勢いだ。
色々聞きたい。この兄に。
どうやって封印の中の九尾に接触したのかとか九尾に敵意を向けられてどうしてそんな能天気でいられるのかとかそもそもどうして九尾と会いたかったのかとか名前を聞くメリットがあるのかとかなんでそう生き生きとしているのかとか・・・。


「初めて見たときにね、すっごく綺麗だと思ったんだ。だから、あれからずーっと会いたいと思ってたんだよ」
「・・・そーか」


なんというか、俺の兄になる人はいろいろとおかしいです。
つーかなんかキャラ変わってないか?
















-------------------------------------------------------------

って、わけで宵知さんからのリクで九尾が出てくる話、でした。
・・・え?出てきて無いじゃん。。。
しかも内容薄い上に無駄に長いし。しかもお題と合ってない・・・。

――――――

こ、こんなんでよろしいでしょうか(冷汗)
すみません、これが精一杯です。
そして無駄にわかりにくいネタを紛れ込ませてみたり・・・(ぼそり
宵知さんリクエストどうもありがとうございました!!! (逃走