それは、まるで一輪の花。







ハサハを連れての買い物の途中。
何か買い忘れの品はないかと、手渡されたメモをチェックしていると、ハサハがじっと一点を見ているのに気付く。
何かと思ってその方向を見ると、見ているのはアクセサリーを多く扱っている店があった。
その店には客数もそれなりにあり、品揃えもそれなりにはあった。
ざっと目を通して見て、あぁ、これを見ていたのかと、ただ、そう思った。


「ハサハ、次に行くよ」
「うん」


そして、何事もなかったかのように、その場を離れた。
いや、俺にとっては、何もなかったのと同然のことだった、それだけのことだ。
片手に抱える荷物を持ち直し、文句一つ言わずに俺についてくるハサハの手を取って、歩き出した。
それにしても、食料の買出しにしては荷物が多すぎる。
せめてもう少しこまめに買出しして一回に買う分を少なくしてくれてもいいと思う。





たくさんのひとがいる。
ちょっとだけ、そのたくさんに怖くなって、お兄ちゃんを見た。
お兄ちゃんは、小さな紙をみていた。
ハサハはお兄ちゃんからはぐれないように、ぴったりとひっつく。
たくさんのひとを見てるのにも飽きて、次はお店を見てみた。
きれいなお飾りを覗き込んでいるひとの目が、きらきらしていた。
小さなおんなの子がいろんなものを指して傍にいるひとに相談したり、軽く自分にあててみながら笑ってる。
一緒にいるのは、お父さんとお母さんかな・・・。

――――。

別に、還りたくなったんじゃない。
お父さんと、お母さんは・・・、大好きだけど、お兄ちゃんやお姉ちゃんたちにも、いっぱい遊んでもらいたいけど。
こっちにはお兄ちゃんがいる。
お兄ちゃんといたい。
お兄ちゃんの力になりたい。
お兄ちゃんにもっと認めてもらいたい。
お兄ちゃんが、好きだから。



お兄ちゃんは、なにもいわない。
ただ、手を出してくれて、ひっぱってくれる。
ハサハが、迷子にならないように。
さびしくならないように。
ハサハは、お兄ちゃんが優しいのを知ってる。
にぎってくれる手が、ちょっと冷たくて、でもこころをあったかくしてくれるってこと、知ってる。

まるで、お父さんみたい。

似てないけど、そっくり。
ちょっとだけ、そのことに安心して、ぎゅっ、って手を握ったら、答えてくれるように、ぎゅ、って、握り返してくれた。
嬉しくて、握られた手を頬にこすりつける。
お兄ちゃんは、なにもいわなかったけど、少しだけ歩くのをゆっくりにしてくれた。








「こうゆうの、欲しかったんだろ?」


そう言って、髪に慣れた感触。
それに、もしかして、とそのあたりに手をやろうとする前に、お兄ちゃんから「これもやる」と言われた。
おわんにした手に落ちてきたのは、かわいい手鏡。
鏡の裏は、見慣れたお花。
むこうで使っていたものと、よく似ていた。
おずおずと鏡で頭を写すと、赤いかんざしが髪に飾られている。
びっくりしすぎて、なんども見直した。
それで、すっごく、すっごく嬉しくなった。


「・・・ありがと、お兄ちゃん」
「あぁ」


ハサハは、優しいお兄ちゃんが、大好きだよ。









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アキラさまリクエスト、「憑依召還」夢主で、ハサハ相手にほのぼのでした。
リクエストにちゃんと添えられているでしょうか・・・?
こんなんでよろしければもらってやってください。
ありがとうございました!!