暗い暗い暗い部屋。
まるで、マグナと出会ったところだ。
だけど、ここには俺しかいない。

一人。 独りだ。

ここには俺しかいない。
誰も、頼ることができる人はいない。
いないんだ。誰も。
冷たい空気。
その冷たさは、マグナの記憶を刺激して、さらに孤独で憂鬱な気分にさせてくれる。

こどく。

それには、慣れているのに。
今、どうしてこうなっているのか、わからない。

叫んでしまいたい。
なにも考えたくない。
なのに、どうしても、思考はぐるぐると回るばかりで。

が知れてしまったらどうなる?
未来が変わってしまったらどうなる?
悪魔に負けてしまったらどうなる?
マグナの願いを叶えられなかったらどうなる?
もし、俺の存在意義がなくなってしまったらどうなる?

わからない。
どうしたらいい?
いてもたってもいられない不安。

何も考えたくない。
それでも考えてしまう。
何を考えたらいい。
一体俺はどうしたらいいんだ。

あぁ、もう逃げ出してしまいたい。
何も考えたくない。

堂々巡り。

気力が。
あの時、マグナを守る気持ちが弱まっていくのを感じる。
自分が、弱っていく。
存在すら、消滅してしまう――。





誰の声だ、これは。
聞きなれない声。




また、声。
幻聴ではない。
でも、この部屋には誰もいない。
誰の声だ・・・?
震える体を抱き、耳をすます。
声はずっと、飽きることなく俺に注がれる。


、しっかりしろ」

、気を確かに」

、大丈夫だ」

、頑張るんだ」

、お前ならできる」

、不安に思うことなんてない」

、とにかくやってみればいい」

、自分に、負けるな」


声に、だんだんと落ち着いてくる。
そして、気付く。
この声は、マグナのものだ。
――つまり、自分で自分のことを励ましていたのか。
無意識にでも、そうしなければ、気が狂っていたのかもしれない。

大きく息を吸って、吐く。

ずいぶんと長い間、ろくに呼吸もしていなかった気がする。
久しぶりに新鮮な空気が肺を満たす。

相変わらず、暗い部屋。

だけどカーテンの隙間から光が差し込んできている。

その光の筋に、手を指し伸ばした。





とりあえず今は、もう不安に押しつぶされる事はなさそうだ。














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時間軸としては原作前、のつもりで。
自分を励ます主人公。マグナの声に気分を落ち着かせる、みたいな。
こんなですが、リクエストに沿っていますでしょうか?

浅田さま、どうもありがとうございました!!