「006.雨を待つ」








なんとなく、視線を、上に。
そうして必然的に、目に入り込むのは、青い、空。
こんな気分のときに限って、雲ひとつない快晴。
どうせなら、このはっきりしない気分と同じような、うっとおしい天気にでもなればいいのに。
自分の気分に合わせて天気までも変わるはずがない、そうはわかっていても、身勝手な俺はそれを欲しがる。
思い浮かぶのは、前から少しずつ存在感が大きくなってきた奴のこと。
欲しいものは、少し強引でも、力ずくでも手に入れてきた。
諦めるより先に、それを手に入れるためにがむしゃらに行動した。
だけどこればっかりは、そうはいかない。
こんなふうに、思考に沈むなんてこと、自分のキャラじゃない。
そうは思っても、俺はその場から離れられなかった。






「何、してるんだ?」


呆れたような声。
気配は感づいていたが、俺のことに気付いたとしてもそのまま通り過ぎていくだろうと思っていたから、少し意外な気がした。
顔を声の主に向けて、そういえば俺は何をやっているんだろう、と思い当たる。
少し考えて、搾り出した答えは、自分でもよくわからないものだった。


「――雨を、待ってる」
「雨?」


俺の最近気になっている奴――――は、俺の言葉に視線を空に上げた。
俺も、視線を空に戻す。
・・・空は相変わらずに、透明な青一色だ。
雨が降る気配なんて、これっぽっちもない。
なのになんで俺は、雨を待ってるなんてことを言ったんだ?
自分の言葉に首をひねる俺を見ては、呆れたように腰に手を当てた。


「なんだか俺にもよくわかんないけどな、雨は待ってもくるもんじゃないだろう」
「・・・わ、わかってるってば」
「・・・・・・ドベ口調だぞ」
「うるさいってばよ!!」


ふ、とがわらう。

あ、その笑みだ。
最近、の限りなく精巧な笑みが、見分けられるようになってきた。
だからか。
その笑みを見ると、ほんっとにむかついてくるんだ。
意識的にか、無意識にかは知らないけど、お前になんか気を許さないと牽制されているようで、ほんっとにむかつく。


「ったく」
「まぁそうふてくされんなよ。どうしても雨を降らせたいならお前ら二人の忍術か妖術なんかで降らせればいいだろ?」
「おい、からかってんだろ」
「さぁ〜て?」


むかつく。
こいつ俺たちよりも年下の癖にこうしておちょくってくるところもむかつく。
大体俺がほんとに雨を待ってるってわけじゃないのに、それをわかってて、こういう解決策を提案してくるってところもむかつく。
まぁ確かに俺とシカマルが研究すれば実現できるかもだけどな。
なんかさっきから俺、むかつくばっかり思ってねぇ?
どうして俺、こんな奴のことを気にかけてるんだろう。
口元だけでにやにや笑ってくるは、他の奴だったら容赦なくねじ伏せてんのに。


「ま、あれだ。雨だって無くてはならないものだしな。放っておけば自然に来るさ。恵みの雨、雨降って地固まるってな」
「・・・・・・そうか、そうだな」
「ん?やけに素直だな。逆に気持ち悪い」
「うるせー」


一言余計だっての。
でも、そうだな。


、前言撤回」
「なんだ?」
「俺は雨を待つんじゃなくて、雨を降らせるわ」
「はぁ?マジ?」


だって、雨降って地固まるって言うんだろ?
お前を、心から仲間だって俺は言い張りたいんだ。

欲しいものは、少し強引でも手に入れてきた。
なら今回も、そうしちゃいけない理由はない。
雨は、きっかけは待っても来るもんじゃないんだろ?
だったら、作ってやろうじゃんか。
まずはジジイに掛け合ってをアカデミーにでも入学させよう。
シカマルにも協力させれば、おもしろくなっていくだろう。
その時のことを、想像してみる。


これからもっと楽しくなりそうだ、とわくわくした。











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五万企画リクエスト第「009.雨を待つ」にて佳月さまから「もう一度、やりなおし」連載夢主設定ナルトお相手でした☆
ナルト視点で時期的にはアカデミー前・・・で、どうでしょうか・・・?(ドキドキ
ナルトは「待つ」キャラじゃないかな〜と思い、こんな出来上がりです。

それでは、最大限の感謝を込めて。
ありがとうございました☆