この世界にも、あの世界にも朝日があって、日は天高く昇り、ゆっくり沈んでいって夕日となり、完全に落ちると代わりに月が星のきらめきとともに世界を照らす。


「きれいな夕日だなー」


のんびりと歩く道が赤い色に染まっているのに気付いて、空を見ると、思ったよりも建物に近い位置に真っ赤な大きな日があるのを確認し、口が勝手に言葉を紡いだ。
俺の言葉にトリスも日を意識にいれたのか、「ホントだー」と普段よりはいくぶんか抑えた音量で声を漏らす。
元々ゆっくりと歩いていた歩調も、落ちゆく日と無意識にあわせるみたいに更にゆっくりになる。
やわらかくて、優しくて、透明で、寛大で。
建物の間から落ちてゆく夕日は空の半分を赤白く染めていて、でもすでに俺たちの頭上は夜の色で、小さく星がきらめき始めていて。
空の色が、それだけで芸術作品になりそうな。


「へッ。そんなんどーでもいーだろ。さっさと行こうぜ」


そんな俺でもどことなく物静かな気分になるというのに、この悪魔はこともなげにそういい捨てた。
予想通りというか、想像通りというか、やっぱりバルレルには美しいものを観賞することに大した意義を見出さないらしい。


「ちょっとバルレルー。せっかくの良い気分をぶち壊しにしないでよー」
「すごく・・・きれい・・・だよ?」
「るせーな。俺はんな情緒持ち合わせてねェよ」


ふ、とそっぽを向いたバルレルの顔も赤く染まっている。
見ようによっては照れているようにも見えるが、実際にはただたんにすねている(この表現も適切ではないだろうけど)だけだろう。
バルレルに赤は似合うと思っていたけれど、夕日の赤い光にはそぐわないなと苦笑しながら思う。


「コノ景色ニハりらくぜーしょん効果が期待デキマスガ・・・」
「そうなんですか?なんだかボクは故郷のメイトルパを思い出して懐かしく思えます」


レオルドの解析、そしてレシィが言葉を続けると、話題は勝手に移り変わった。
それを助長するように俺も会話に入る。


「それは見てみたいね、メイトルパの夕日かー」
「お兄ちゃん・・・ハサハのとこも・・・きれいだよ?」
「私も見てみたいー!!」
「女、テメェが見れるわけねェだろバーカ」
「あっ!!酷いバルレルー!!」
「ご、ご主人様ぁ!?落ち着いてくださいッ!!」
「レシィも、私のことはトリスって呼んでって言ったのにー!!」
「う・・・それは・・・その・・・ご主人様ですし・・・」
「あはは、急には無理だろ?」


というか、護衛獣たちってまともに名前を呼んでくれるのってレオルドくらいじゃないか?
それから話題は移り移り変わる。
笑って起こって慌てて、軽口を叩きながら道を歩く。
それぞれが、それでも穏やかに笑い合える瞬間。
日が完全に姿を消し、空全体が夜に染まったころ、目的地に着いた。
せーの、で掛け声を掛け合って





「「ただいまー!!!」」









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朝陽さまから護衛獣sということでした。
なんだかおかしな出来になっててすみません;;;
帰り道=夕暮れの道みたいなイメージだったんですけど。

リクエストどうもありがとうございました!!