『あんた!! 今いったいどこにいんのよ!?』
『るせーな。 俺だってどこにいんのかわからんっつの』


ウサギがうるさい。
たぶんいつもの十何倍もの大音量だ。
ったく、いくらなんでも・・・やかましいったらない。


『だーかーらー!! 今紫苑をやってるんだからなんか目印でもなんでも手がかりよこしなさいよ!!』
『んなこと言ったって俺今目隠しされててどっかの洞窟っぽい湿った感じのところに放り込まれてるってことくらいしかわかんねーよ』
『・・・・・・』


ウサギが黙り込んだ。
ま、そのほうが助かる。


『あんたさっさとそのこと言っておきなさいよ!!』


あぁもうッ!! 紫苑に片っ端から探させるわッ!! と、ウサギは大音量で念を送ってきて、しばらく俺の頭の中は静かになってくれた。
・・・最後の大音量で頭がズキズキと痛んだが。
それで顔をしかめていると、誰かにあごをすくい上げられる。


「おい、聞いてんのか」
「・・・・・・・・・」


聞いてないっつの。
大体お前に興味なんてないし。


「手」
「あぁ?」
「手、放せよ」


ふっ飛ばされた。
背中から壁にぶち当たって軽くむせる。


「もう一度この俺様が言ってやるんだ。 よーく聞きやがれ」
「・・・ぐっ」
「お前を生かしてやるかわりに里抜けして音の里に来いっつってんだ」
「・・・・・・っ」


首にひやりと鋭い感触。
クナイかなにか突きつけられているんだろうな。 この状況だと。
冷静にというか他人事のように考えながらされるがままにいる。


「まぁ、そこにお前の意思なんて必要ないんだけどな」


どこからか俺のドクターとしての情報が漏れ出してしまったらしい。
よりにもよって音かよ、とも思ったが、まぁどこの里から狙われても俺にとっては大差ない。
どこにさらわれたって、面倒なことには変わりはない。
つーか情報操作くらいしっかりやれよシカマル参謀長。


「とりあえず移動するのは明日だ。 それまでに木の葉とのお別れをしとくんだな」
「・・・そうは言ってもこの拘束を解くわけじゃないんだろ」
「あたりまえだ」


『ウサギ、こいつ明日には音に移動するんだってよ』
『あんた何でそんなのんきなのよー!!』


悲鳴まで念で送ってくる必要ないだろ、迷惑だ。
周りに物音がしなくなった。
どうやらさっきの男はこの場から離れたらしい。
ただ気配を消しただけなら俺にわかるわけがないけど。










「おーい、死んでるかー?」
「・・・・・・そこは普通生きてるかとか無事かとか聞く場面だろう」
「ははは、俺とお前も普通だと思ってるのか?」


否定はできないけど。
暗部所属ってだけで普通とはかけ離れてるもんな、俺はまだ忍者になったつもりはないけど。
いや、忍者じゃないのに暗部所属しているって別の意味で異常か。
拘束を解いてもらって、目隠しもはずしてもらった。


「微妙・・・」
「んだよ、解放された第一声がそれかよ・・・。 俺じゃあ不満だってぇのかい?」
「不満だ」
「ひっでー」


笑う紫苑をのけながら立ち上がる。
軽く腕を振ってしびれをとって商売道具の指が無事なことを確認する。
ったく、俺の能力が欲しいっていうのならそれ相応の対応をしろっていうんだ。


「さぁって!! そろそろ脱出することにしましょうか? とらわれのお姫さま」
「誰がお姫さまだこのボンクラ」
「ひでぇよー。 ま、だけどほんとに里に戻らないと捕まっちまうからな」
「なんだ、全滅させたわけじゃないのか」
「いっくら腕利きの俺でも無理だって。 相手は音の忍び二十人よ?」
「ナルトかシカマルならなんとかなるだろ」
「あいつらは別格だって」


苦笑しながら紫苑は俺を担ぎ上げ、瞬身の術を使用してその場から離れた。
変わる視界の隅で、驚愕した男の顔が見えた。










『大体あんた!! !! なんで簡単にさらわれてんのよ!?』
「いや、ただ道すがらに迷ったとか言われて連れてかれただけ」
「は? いや、、お前それはないだろってかそんなのすぐ怪しいって気づけよ・・・」
「・・・怪しいのか?」
『迷子とか言っておきながら連れて行った時点で怪しいわよ!!』
「・・・そうだな」
「・・・あー、後でナルトたちに侵入してきた音忍の始末を依頼するか」
「は? ほっとけよんなやつら」
『そんなことできるわけがないでしょ・・・』
「ん? ウサギまた自分の声にやられたか? だからいつももっと静かにしておけって言ってるだろうが」
『もういいわ・・・』









その後、ウサギがナルトとシカマルにから目を離さないでくれとお願いする姿があったとか。










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お題「001.武器を持つ手」で連載夢主でした。
えっと、なにかの事件に首をつっこむということでしたが・・・

思いっきり拉致られて当事者になってんじゃん!!

あうう、ですが虚無にはこれが精一杯です。
椎さまにささげます!! リクエストどうもありがとうございました!!