私は、おいもさんが好きです。
栄養があって、いろんな料理に使えて、たくさん採れて、なによりもおいしいおいもさんが好きです。
みなさんが、料理担当になった私の食事を、おいしいと言ってくれます。
私は、もっとみんなに喜んでもらいたくて、いろんな新しいレシピに挑戦しました。
反応は、そのときそれぞれでしたが、成功したときは喜んでくれてます。
だけど、一度だけ、大失敗をしてしまったんです。
見た目はいつものと変わらない、いえ、むしろいつもよりも彩りがよくて、私も自信がありました。
けど・・・、味が・・・、その、とても食べられるものじゃなかったんです。
皆さんに食事を出す前にいつもする味見は、そのときに限ってしなかったので、私はぜんぜん気がつきませんでした。
本当に、大失敗です。
でも、そのおかげでいくつか知ったことがあります。
まずは必ず味見をしなければならないこと。 もう二度とあんなものをみなさんに出したくはないです。
それから料理は見た目も大切なこと。 あの見た目が、おいしそうだと思わせることのすごさに気づきました。
そして――、マグナさんは味が感じられない、ということ。
あの大失敗した料理、マグナさんが一人先に食べて、いつものように言ってたんです。
「ごちそうさま。 すごくおいしかったよ」
最近、アメルの料理が変わったような気がする。
何がって言われると、味覚が感じられない俺にとってすぐわかる変化なんてそうありはしない。
見た目、あるいは彩りとでも言うべきか。
最初のころは、アメルの大好きな芋を中心に料理していたのに、最近ではとにかく色々な食材を使うようになった。
こないだあまりの種類の多さに、少し数えてみたら50以上の食材が使われていた。 さすがに驚いた。
品目が多くなれば、自然と彩りがよくなる。
味を感じられない俺は、前までのある意味シンプルな食事よりも、味わいがある時間を送れている。
味覚で感じられはしないが、なんだかその彩りだけでおいしく感じられるから不思議だ。
口で栄養を取り、目で味わう。
「料理うまくなったね。 前よりもおいしくなったよ」
「ほんとうですか!? 嬉しいです」
ある食事のあと、アメルにそう感想を言うと、大げさにまでに喜んだ。
それくらいがんばって料理してくれてるのだろう。
「マグナさんのために、もっとがんばりますね」
「うん、ありがと。 楽しみだ」
そんなやりとりをして、だけど俺はすぐにそれを忘れる。
さぁ、そんなことをするよりも、奴のためにまた対策を練らなければならない。
ポケットの中の青い石を握り締め、頭はすでに殺伐とした空気と血と策略が駆け巡っていた。
今までずっと同じだった食後の感想。
それが変わったことに、自分でも驚くほどに嬉しかった。
胸があったかくなって、自然と顔が笑う。
人に喜んでもらえるのが、こんなに嬉しいなんて、初めて知ったような気がします。
また、誰かに新しいレシピを教えてもらいましょう。
もっともっと喜んでもらいたいから、少しでもお礼の気持ちを伝えたいから。
今度は野菜の切り方も工夫してみようかしら。
そんなことを考えながら、洗ったお皿を棚に戻した。
かなり遅くなりましたが、こんな出来になりました。
うん、まぁ、うちのアメルと夢主はこんな感じ。
色々と敵を作りそうな出来ですが、ご了承ください。
ALORCさま、リクエストありがとうございましたッ!!