俺が、そう簡単に受け入れられるだなんて最初から思っちゃいない。
だから、仮にとは言え、同僚からあまりよくない感情を向けられるのも予測していた。
実際に治療するときに、一手間が面倒で意識を遮断せずに腹部に指を埋め込んだとき、あんまりにも従来の治療法とは違う俺のそれに、半狂乱になって拒絶されたこともある。 まぁ、その時はウサギが妖力で抑え込んで無理矢理に治療を施したが。
それに、俺の立ち位置の問題もあるのだろう。
暗部に籍を置きながら、忍びの資格も持っておらず、そして火影に忠誠を誓わない俺に、同じ木の葉の同僚として親近感を沸くほうが珍しい。

・・・・・・つまり、木の葉は珍しいものだらけということだな。

あきらかに好意からなるものじゃない、まとわりつくような視線を体全体で受け止めながら、俺はなぜか視線を遠くにやってしまった。
視線の先には、青い空がある。

あぁ、今日はいい天気だ。







ウサギは今日も暗部の待機所で、専用の位置に座り込んでいた。
体はぐったりとクッションの上に寝そべっているが、四枚の耳だけは妖力を使って一番聞こえやすい位置に空中で静止させている。
無駄に広い(とウサギは思っている)里の九割の雑音を脳内で処理しながら、どうしても聞き捨てなら無い一割未満の会話を聞いてしまったのは、が火影様の報告へ向かっているときだった。


のやつ、今アカデミーに通ってるんだってよ」
「は、俺らが命がけで任務してるときにのんきなこった」
「どーせアイツの居場所は安全な木の葉だもんな」
「違いねぇ、命かけてるのは俺らだけだから気楽なもんだ」


嘲笑、どうよく捕らえようとしても、それはに向けての陰口。
いらっとするのは当然のことだと思う。
ってか本当なら私はここで怒る場面よね? そうよね?
はまったく反応がないから気にしてないだけなんだと思うけど、あれって絶対の耳に届いてるわ。
アタシほどじゃないにしても、の聴力は常人の倍以上はあるんだから聞こえないなんてことは絶対にありえない。
里の雑音を脳から排除して、の周辺と、その男達の会話に集中する。 緊急時のときのための配慮を忘れるなんてことはないけど、今一番私が把握していなければならないのはこいつらのことよ。


「大体あれって、まだ忍びですらねーんだろ? ったく、なんだって火影様もあいつを紛れ込ませてるんだよ」
「しかもこないだ十になったばっか。 ・・・餓鬼は家でマンマのおっぱいでも吸ってろっての」
「ぎゃははは!! お前、そりゃねーだろ!!」


いら、いらいらいらいらっ!!!
あぁいけないっ!! 今この場で妖力を使って散々な目にあわせてやってもいいんだけど、それじゃあこらしめが足りないっって!!
とにかくれレイセーにレイセーに・・・・・・いらいらいらっ


「そういえばあれの素顔ってお前見たことあるか?」
「ん? 別にふっつーってかなんも特徴もねぇツラだろ?」
「それ素顔じゃねーって。 俺、見たことあんだけどよ、ひっでーツラだぜ!! 顔半分ケロイド!! 片目真っ赤でやっぱ人間じゃねーって!!」
「あー、もうあれって人間じゃねーべ?」
「人外だ人外。 じゃなきゃあんなに平然と人の体に指を埋め込む餓鬼なんていねーよ」


ぶっちーん☆
あらいけない、ワタクシのどこかにあった糸のようなものがぶっちぎれたような音がしましたワ。
一体何の音だったんでしょうかしら? ワタクシにはよくわからないですわね、まだまだ勉強不足ということでしょうカ?
あらあらやだやだ、なんでかしら、体の奥からミョーに溢れ出る妖力が止まりませんワ☆


「うおッ!? ウサギ、イキナリどうしたんだよ?」
「・・・里内で不穏な会議でもやってたか?」


あまりの怒りにおかしくなってたアタシの視界に入ってきたのは、ナルトとシカマルのガキ二人組み。
静かに里の音を聴いてたアタシがいきなり不穏な空気を取り巻いたのに気づいたらしい。(実際には不穏な空気ではなく、禍々しい妖力の渦が空間を歪めるほどの結界を作り出していた)
珍しい、この二人はこんなガキでも木の葉の里のツートップで、いつも任務に借り出されて滅多にこの待機所に入らないのだ。


『不穏な会議も何も・・・キーッいらいらするったらないわっ!! あーいーつーらー、いーたいこと好き勝手にいーやがってぇぇえぇ!!!!』
「・・・なんか、俺ら、来るタイミング間違えたか?」
「ウサギがこんなに荒れてるなんて珍しいな・・・何を聞いたんだ?」
『黙ってこっちが聞いてりゃべらべらべらべぇっらと!!! 一体全体どうしてくれようかしらっ!! ・・・・・・そうだッ!!』


ちょうどいい具合に目の前にいるじゃない!!
この、木の葉隠れの里の、ツートップが!!
きっとこの二人も事情を話せば協力してくれるわ、いいえ、しなくてもさせてやるっ!!


『ナルトッ、シカマルッ!! まずはあんたら二人雁首そろえて今アタシが聞いた馬鹿どもの会話を聞きなさいっ!!』
「は?」
「あぁ?」
『とにかく話はそれからよッ!!』


絶対に絶対にぜぇーったいに!!! 許さないんだから!!!!















「おっ、噂のさまだ・・・・・・っが!!??」
「今日もお友達と楽しいおべんきょ・・・・・・ぐふっ!!??」




「・・・・・・・・・お前ら、何やってるんだ?」

「や、ちょっとしたストレス発散を」
「新薬の実験」


なんかもの凄いことになってるんだが・・・。
まぁ、とりあえず診たところ命や仕事に支障のきたすようなことにはなってないし、いいか。
こんなの気にしてたら異常だらけの暗部になんて勤められないもんな。


「やー、ってば愛されてるぅ♪」
「・・・これのどこが?」


目の前では子供のナルトとシカマルが妙な連結でもって、大の男達を地面に引きずりながらどっかに運んでいくシュールな光景が。
なんていうか・・・走って移動して行ったからものすごい音が・・・ガコンとかドゴとか。
なんか、あれだな。
西部映画なんかで見る馬で引きずりの刑を思い出したな。


「だってあいつらよ、んなくそ忙しいときにわざわざの陰口言ったやつ締めてるんだろ?」
「・・・・・・あれ、そうだったのか」
「って気づいてなかったのかよ」


んなの俺は全然気にしない性格だってわかってるだろうに。 無駄なことを。
待てよ、陰口叩いてたのをナルトとシカマルが知ってるわけがないから・・・、あいつ、ウサギの仕業か。
・・・・・・過剰防衛っつーか、やりすぎっつーか、過保護っつーか・・・。



「恥ずかしー奴ら」
「とか言ってるけどウサギ、ってば顔がにやけてるぜー」
『生意気な口利かないのー』


















ってわけで、憎まれ口を聞く主人公・・・?
愛されるっていうか、利用されてるっていうか、妙にウサギがでしゃばりました。
まぁ、一番のオーバーアクション賞はウサギということで☆ (わけがわからない

葵さま、ありがとうございました!!!!