「マグ兄、このパンおいしーね」
「うん、おいしいね」












「ゆ、め・・・か」


見えたのは、天井。
一瞬前の景色が、頭の中で繰り返し再現される。
幼い二人・・・、ずいぶんと古いものに思えるのは、彼にとってはるか昔の思い出になっているからだろうか。
夢は最後まで思い出すことができなかった。
目じりに冷たい感覚がある。 涙、か。
なんでだろう、酷く悲しい夢だったのだろうか。 もう戻れない過去に哀愁でも感じたのか。
だるい体を起こし、乱暴に目元をぬぐう。
熱いまぶたを押さえつけ、水分が残らないようにと念入りに抑えた。


「――マグナ」


自分の中に意識を集中する。
だけど、なにもない。
――いつものことだ。
俺の中、正しくはマグナの中に感じるのは、いつでも彼の魔力だけだ。
空虚な気分になるのは、それでも少し、期待しているからだろうか。


「バカバカしい」


一息ついて、ベッドから出る。
ふら・・・。


「――っと、大丈夫? お兄ちゃん」
「・・・あ、トリス」


うまく体が動かず、倒れそうな体がトリスに支えられた。


「おはよう、お兄ちゃん」


朝一番の笑顔がまぶしい。 トリスにしては珍しく早起きしていたようだった。
俺もオハヨウ、と返してふらついた体をなんとか立て直す。


「・・・・・・・・・」
「ん、どしたの?」


少し下にあるマグナの双子の顔をジッと見つめてしまう。
彼女から目が離せないのは、見てしまった夢のせい、だろう。 なんだかいつもよりも気になってしょうがない。
幼い頃の顔はもっと・・・。


「ねー、ほんと、どうしたの? お兄ちゃん、具合悪い?」


心配そうな顔で覗き込んでくるトリスに、とっさに笑みを返す。
確かに寝起きで体はだるいが、たいしたものじゃないだろう。
そんなささいなことで、トリスに心配かけるわけにはいかなかった。


「大丈夫だよ、心配いらない」
「・・・お兄ちゃんの大丈夫はあんまりアテにならないんだけど・・・、しょうがないなぁ」


以外とトリスが付き合いやすいのは、こういうところだ。
聞いて欲しくない部分には、決して自ら触れようとはしない。
見上げてくる目が、少しだけ尊いものを感じさせて、また、複雑な気分になった。
本当にその目を向けられるべき青年は、今はいない。
双子の片割れだけでなく、俺の周りにいる全てを欺いている自分。
真実を知った彼らは、そのとき一体どう思うのだろうか――。


「やっぱり今日は調子がおかしいかもしれない」
「あんまり無理しちゃだめだからね!」


こんな余計な事、普段なら考えないのに。
はやく気持ちを切り替えなければ。
やりきれない思いなんて、今の俺には必要ないのだから。

部屋から出る前に、大きく深呼吸をして、俺はマグナになる――。












主人公のもつやりきれないってなんだろうなーっと色々(それこそギャグも)考えたのですが、なんだかシリアス風味になってしまいました。
この話を要約すれば、まぁ、「みんなだましてゴメンナサイ」っていう感じでしょうか?(笑
あんまし雰囲気は出てないですね・・・ほんっとにすみません;;

それでは玲奈サマ、大変遅くなってしまいましたが、リクエストありがとうございました!!