ー、任務だ」


その言葉で、深く考えずに席を立ってしまった自分が、今は憎たらしい。
今思えば、そんな伝言のためだけに一応里のトップであるナルトとシカマルがよこされるはずがないし、途中から紫苑も合流したことも不自然だったんだ。
俺は今、こいつら三人に引きずられ、火の国の端に位置する小さな村へと来てしまっていた。






「なんでも、この辺の村の過疎化が進んでいて、今までの生活ができなくなっているんだと」
「それで木の葉に相談したら、温泉を経営するのはどうだ、と」
「まぁ、こんなところで農業をするよりは活気が戻ってくるし、管理だけなら楽そうだしなー」
「・・・そこで、問題は解決しなかったんだな」


そうでなければ、俺は今頃ここに連れてこられるはずがない。
ナルト、シカマル、紫苑。 このメンバーが揃ってしまったら抵抗しても無駄だということを最近覚えたので、もう色々と諦めた。
最近、こういう諦めに慣れてしまったような気がしていやだ・・・。


「まぁ、そもそもこの村に温泉がないから、なんとかして掘り当ててほしいんだと」
「――そんな依頼を受けたのか」


むしろこの世界の忍者なら温泉くらい簡単に作れそうなもんだけど・・・。
もしかして天然じゃないといけないっていう村からのこだわりでもあるのだろうか。
そうシカマルにこぼすと、予想外の反応が返ってきた。


、温泉をなめるんじゃねぇぞ。 確かに忍術で似たようなモンは作れるが、湯の成分とかずっと湧き出る源泉とかまでつくるのは不可能なんだ! むしろ忍者が作ったもどきなんて温泉じゃねぇ!!」
「そ、そう、なのか・・・」
「そもそも癒しに来た温泉が普段血なまぐさい忍者の手によって人工的に作られたもんだって知ったらショックどころじゃねーぞ!」


・・・確かに。
いや、思わず納得してしまったが、それよりも珍しくシカマルが熱くなっている。
なにか温泉に深い思い入れでもあるんだろうか。
苦笑しながら紫苑が俺と熱っぽく語るシカマルの間に入る。


「まーまぁ、そこら辺で。 このあたりは源泉がいっぱいありそうだし、そんなに面倒な任務じゃないからいいじゃないか」
「そもそもこの任務は遊びのついでだしな」
「そうなのか?」
「ほんとは、オレ今日休みだったんだけどさ、この面子で休みを合わせるのは流石に難しいだろ? だから面白そうな任務を選んでもらってきたんだよ。 温泉掘り当てられたら一番に入れるしな」


紫苑、お前って意外と頭いいな。
任務の取り組み方についてはお偉いさんが聞くと怒り狂いそうだが・・・。 こんなんがトップで木の葉は大丈夫なんだろうか。
なんだか火影がかわいそうになってきたかもしれない。


「それで、温泉っていうのはどうやって掘り当てるものなんだ?」
「あぁ、まずはとウサギで水源を音で探してもらう」
「・・・ウサギ、お前も連れてこられたのか」
『事前に説明くらいしなさいよ! いきなり拉致されたときはどうしようかと思ったわよ!』


まるで手品師のごとく、どこからかウサギを取り出したナルトに脱力。
というか、その作業ってウサギ一匹がいれば事足りるんじゃないだろうか。
ナルトに不安定な格好で抱えられながらわめくウサギは、いつもどおりにうるさかった。 あ、耳抑えてる。


「はいはい、じゃ、さっさと温泉探すぞ」


もうなにもかもがめんどくさくなって、目を閉じて意識を集中した。
とりあえず地下を流れる水の音を探し出せばいいのだろうが・・・、オレにはいまいち聞き取れない。


「ウサギ、聞こえるか?」
『聞こえることには聞こえるけど・・・、どこからかって言われると・・・』


ウサギが言うには、水源は広範囲で流れていて、どこを掘り返せばいいのかはわからない、と。
紫苑が地図を取り出し、ウサギの短い手がその水源の流れを書き込む。
しばらくシカマルがそれを見て考え込み、掘る場所を決め俺たちは現場へと移動した。
村から少し歩いた景色がいい場所。
確かに、こんなに景色がいいところで湯につかれば気分がよくなりそうだ。


「じゃあとりあえず、深く掘ればいいんだよな」
「よーし、じゃ、やるか!!」


ナルトと紫苑がわくわくしている。 まぁ、考えようによっては宝探しのようなものだからなにかくすぐられるものがあるんだろう。
キバあたりがここにいれば、喜んで人の犬ほりを見せてくれそうだ。
オレとウサギはやることを終えたので、でかい岩に腰掛けてその様子を見ていた。
シカマルが俺のそばまで移動してくる。


「なぁ、シカマル」
「あー?」
「俺をここに連れてきた本当の理由って・・・」


言いかけたとき、ナルトと紫苑の叫び声。
漂ってきた独特の異臭に、深くため息をついた。


「――やっぱりな、こんなことじゃないかと思ってたんだ」


ウサギを下ろして立ち上がり、目を押さえてうめいているナルトと紫苑のそばまで寄った。
シカマルが現場から距離を置いていたのは、このことを予想していたからだったのだろう。
まったく、なんて悪いガキなんだろう。
















どうやらあの毒気は、温泉の成分が地下にずっと閉じ込められていたがゆえに、腐化してできたものらしく、あと数週間もすれば毒性もなくなる。
経営するのに問題もなくなるので、俺たちが請け負った任務も無事遂行できたということになる。
もろに毒気をくらってしまったナルトと紫苑は目が真っ赤になっていたが、少し視力に影響はあるが、後遺症は残らないので治療せずに放っておいた。
それよりも、二人が一人非難していたシカマルに対して問答無用のリンチをしたほうが重体だったりするが、まぁ、いいだろう。


「次の休みにまた来るか」
「だな、その頃には設備もちゃんとできてるだろうし」
「そのときの飯はもちろんの手作りな!!」
「誰が休みの日まで働くって言うんだ」
『ちょっと、アタシのことも忘れないでよ!!』
「あー、それにしてもなんか疲れたな。 帰ったらみんなで銭湯行こうぜ」
「いーね」
「・・・・・・なんかおかしい気がするのは俺だけか?」













という感じで・・・、えー、すみませんでした。
まずお風呂というお題の癖に銭湯を掘り当てようとするぶっ飛び発想が自分でもわかりません;;
この面子でただ広いお風呂に入って和気藹々とする姿が思いつかなかっただけなんですが。
や、それもどうなんだろう・・・。 自分の発想力がないだけなんだが・・・。

ってことで、佳月サマ。 いつもありがとうございます!!
ものすごく遅くなってしまった上に、こんな出来でほんと申し訳ありません;;
これからもよろしくお願いしますv