その日は、珍しく三人が揃って家にいる日になった。
はいつも家に仕事を持ち込み半引きこもり生活を送っているが、ナルトと俺は数多くの任務を与えられるためすれ違いが多く、こうして一緒にいられる時間がまとまってあることは、アカデミー以外ではそうない。
忙しいときにはアカデミーも影分身を残し任務を遂行するときもあるくらいだから、アカデミーのある日でも直接会えない日も続くことだってある。
は、そんなに忙しいならいっそアカデミーを辞めさせればいいのにと言うのだが、そこは大人の事情とやらが深く関わりそうはいかなかった。 今後のための裏工作ともいえるが。
は、机の上にある道具を片付け始めた。 研究、というか実験が一区切りついたのだろうか。 その成果がどうなったのか、動かない表情からはわからないが、片付ける手つきを見ると結果は上々のようだった。 彼はわかりにくいようで、実は分かりやすい。
きっと、今まで生きている中で、人と接することが少なかったから、隠し事をするスキルが高める必要がなかったのだろう。
視界の端に入る時刻を確認すると、昼を過ぎていた。
火影のじいさんは今頃折れの提出した書類相手に頭を抱えていることだろう。 考案したものは実行するまでにはめんどくせぇこと間違いないが、その分以上の利益が得られるはずのものだ。
無表情のまま台所スペースに移動するを見送り、口の端を上げる。
ナルトが昼のメニューを聞いて、腹が減ったと嘆く。 だったら自分で何かを作ればいいのだろうが、思いの他の料理がうまいのが悪かった。 俺も空腹だ。 育ち盛りの肉体は燃費が悪すぎる。
――俺の出した考案に、が組み込まれていると知ったら、彼はどんな反応をするのだろうか。
怒る? 殴る? 呆れる? あきらめる?
まぁ、あんなでも押しの弱いのことだ。 押し付けさえすれば逃げたり中途半端に放棄するようなことはないだろうということは分かっている。
文句を言いながらも役割を果たしてくれるそのときを想像するだけで、愉快になる。
何かを焼く音とともに、食欲を刺激する匂いが部屋の中を満たしていく。 同時に俺の腹の中の虫も騒ぎ出しそうになってくる。
膝の上に広げていた巻物をたたみ、持ってきていた袋に入れる。
さすがに、里の重要機密書類に焼肉の匂いをつけてしまうと火影のじいさんがかっこつかないだろう気遣いだ。
ころあいを見計らって、俺も台所へ入る。 の手元を見てからガラス棚をあけ、適当な皿を出して盛り付けやすいように並べてやる。
ナルトも入ってきて、飲み物やはし類を担当する。 子供とは言え、三人同時に入ってもまだ余裕のある台所は、俺らがここに入り浸るようになってからが増設し、冷蔵庫やコンロなどがグレードアップしたのを俺は知っている。
鼻歌を歌いながら準備を進めるナルトは久しぶりのまともな食事が楽しみでしかたないのだろう。 かく言う俺も、の料理が楽しみで、自然と口元は緩んでいた。
凝り性なのか、の料理は見た目も中身も味も全てが上級のものだ。
最初にこの色鮮やかな作品を見たときには、本人とのあまりのギャップに何度も視線をさまよわせてしまったくらいだ。 口の中に入れて、実母よりもうまい料理に、こっちに住み着いてしまおうかと思った。 その言葉を口にする前に、ナルトが嫁に来いと叫んで容赦なく沈められていたから口には出さなかったが。 俺らは代わりにこうやっての家に入り浸っている。
食事中は完全に会話がなくなる、が、静かにならず、食器の立てる音や、租借の音、俺とナルトのせわしない動きのせいで、静寂とは程遠い。
作った本人は、手のひらサイズの小皿にまたバランスよく盛り付けられた俺らと同じメニューでゆっくりと食事をする。
体重を気にする女子よりも少ない食事量に、時々心配になるが、体のつくりが違うからこれで十分だというのが本人の弁。
体内にあるエネルギーを効率よく使っているから、日によって量を調節しているらしく、たしかに大きな手術を行った後はいつもよりも少しだけ多く食べている。
考えながらも腹が満たされていくと、は先に食事を終え、小皿を片付け、今度はチョコレートを出して食べはじめる。
これまた意外だった事に、はこういった甘いものを良く食べるのだ。
好きかどうかと言われれば、どちらでもないという感じがする。 よく頭の栄養だと言って食べるので、本当は嫌いなのかもしればいが、と甘いものという組み合わせがあまりにも似合わないので、笑っちまう。
かくいう俺は、甘味はかなりの好物だったりするんだけどな。
食事を終えると、俺となるとが食器類を片付け、さらに俺は茶を淹れてまったりするのが慣習だ。
それぞれ好きなことをして、たまに一緒に食って寝て任務して、のこの関係が存外に居心地良いと気付いたのは、一体いつのことだったか。
茶をすすりながら、趣味の将棋本を流し読みし、穏やかに流れる時を感じる今は、とても貴重だ。
たまにあるこの時間がないと、俺らは過労死してしまう。 ちなみに比喩なんかじゃない。 マジだ。
寝転がっているナルトの腹に足をのせ、呆れるを引っ張りこんで一緒に床の上へ。
抱き枕よろしく拘束してやれば、あっさりと抵抗をなくしてくれて、俺も目を閉じた。
いつまで、この時間は続いてくれるだろうか。
いつまで、この関係があってくれるだろうか。
いつか、これがなくなったり、崩れたりする日が来るのだろうか。
考えても仕方がないことだと思いながら、少しだけ腕の力を強くした。
は気付いたのか、腕を軽く叩いて撫ぜる。 まるで赤子をあやすようで、少し複雑な気分になったが、しょうがない、大人しく眠りに入る。
俺は、永遠なんて信じない。
いつか来るその日そのときまで――
正直、口には出せないくらい恥ずかしいけどよ、なぁ?
お題26、一緒にいよう、でした。
一応シカマル視点、のつもりでしたが、気付いてみれば彼の名前、ない作品になっていました;;
本編で微妙に出した夢主の趣味を出してみましたが、いかがでしょうか? (←どうでもいいでしょソレ
それでは聖那さま、リクエスト参加ありがとうございました☆