目に入る四角い空。
今日は、夕方から雨が降るという予言らしい。
遠くに見えるあのキラキラとしたものは・・・、なんだっけか。 興味がないからよく覚えていない。
どうでもいいことだから、なんでもいいけど。
かすかな風が頬をなぜる。 だが、きっと外では相当な風がふいているのだろう。
だが、建物に囲まれたこの中庭は、穏やかな時間が流れている。

隔離された、小さな箱庭。
それが、俺の世界の全てだった。

ぼんやりと四角い空が翳ってきたとき、俺の膝の上にある小さな頭が少し動く。
見下ろすと、閉じていたまぶたがぼんやりと開き、覗き込んでいた俺と目が合う。
本人は気付いたはいないかもしれないが、寝起きのは酷く儚げで、つい壊してしまいそうなくらいきれいだ。
そんな顔は、俺以外に誰も知らせない秘密だが。
意識がはっきりしだすと、の顔からはそれら全てが消え去り、まるで野生の獣のように鋭さを取り戻す。
びりびりと感じる生気は、俺にはまるでないものだ。
しばらく、自分が今どんな状況でいるかに気付く。 あわててが俺の膝からどこうとする前に、俺が地面に突き飛ばして転がしてやった。
まだ体のほうが目覚めていないのか、はおもしろいように頭からものすごい音を立てて落ちてゴロゴロと痛みにもだえた。
ちょいやりすぎたか? まぁ、こいつなら丈夫だし大丈夫だろ。


"――っ主!"
「ったく、のんきにご主人サマの膝枕で睡眠なんていいご身分じゃねーか」
"そんなこと言うけどルーク!! 寝ている俺を勝手に自分の膝に乗せているのはアンタじゃねーか!?"
「あー? んなこたぁ知らねーよ」


ずいぶんとあっさりと下僕の仮面を外したは、まるで気の強い小動物のような反応で、からかうのが楽しい。
普段はなかなかいじくる機会がなくてつまんねぇからな、ヤツいわく、従者が無礼を働くなんてとんでもない、らしいが、たまには思う存分遊んでもらってストレス発散させろっつーの。
まぁ、普段もからかいがいのある反応はしてくれるが、やっぱり寝起きはより素の反応だから。
気に入ったやつは、とことん弄くるのが俺の性格なんだ。
だからにはもう諦めてもらうしかない。
これが他のやつだったら、とっくに逆鱗に触れてる場面だ。
俺はどうやら、人を怒らせる才能があるらしい。
感情を爆発させたとき、人は偽りではなく本音をぶちまけてくれる。
人の本音を探るスキルは、今ではなくてはならないもの。
それを、ずいぶんと早いうちから身に着けた俺は、そうとうひねくれてはいるが、それを嘆くわけにはいかなかった。
そうでなければ、自分は生きてはいない。 おそらく死んでもいないが。
そのスキルで、ある真実をつかみ、それをネタに脅し、手に入れたものが、一つだけ。
俺の目の前にある。


"主・・・?"


ち、もう普段のペースに戻りやがった。
ちょっとだけむっとして、髪をぐしゃぐしゃにしてやる。
硬い髪は、手のひらにちくちくしたが、気分は悪くなかった。
こいつは、正真正銘、俺のもの。 俺の所有物で、俺の戦利品。
他の誰のものでも、自身のものですらない。


「さぁて、ご主人サマの膝の上で居眠りした分、その体で支払ってもらおうじゃねーか」
"な、ちょっと、人を勝手に動かしておいて・・・"
「これから部屋に帰るぞー」


楽しみにしとけ、とひきあがる口の端を意識しながら立ち上がる。
がその言葉の意味を考えて、顔が歪んだ状態で固まった。
中で存分に遊んでやる。 そのときの反応は、結構気に入っているし、退屈しないから好きだ。
弄繰り回すと、本当にいい顔をするんだ、こいつ。
今更ながら、本当にいいオモチャを手に入れたよな、俺。

後ろで固まったままの気配を無視して、自分の部屋へと向かう。
あと少しだけ待っててやるから、きっちり覚悟してついてこいよ?
あんまり待たせたら・・・、まぁ、わかってるよな? 












軟禁状態にいるルークと主人公の日常の一部をお送りしました。
普段はルークが主人公をオモチャにして弄繰り回していて、たまに剣術などの稽古の相手をしたり。(作中で語れ
正直言って、主人公の扱いは酷いですよw でもそこに愛があるからオッケーって感じで(笑

兎雪サマ、リクエストどうもありがとうございました!
大変遅くなってしまい、申し訳ありません;; これからもよろしくお願いします。