道中、野党との戦いのあとに見る兄弟のやりとりに、思わず目を離せなくなってしまう。
軽く擦り傷を作ったマグナが、トリスを心配して声をかけるが、トリスは逆にマグナの傷を見つけてキッカの実で手当てしながら説教している。
いつ見ても仲がいい。
兄弟であんなにも仲がいいのはきっと珍しいのだろう。
もう一組の双子を見ても、それほど仲がよさそうには見えなかった。 まぁ、深いところではお互い大切にしているのはわかるのだが。
離れ離れになっていた特殊な環境のせいかもしれないが、それにしても思春期の兄弟、それも異性なのにあれだけ仲がいいのは滅多にあることじゃない。
彼らのやりとりをみていると、戦闘後のあらぶった気分もなだめられて、ほんわかしてしまう。
「まったく、いつまでそうしているつもりだ」
そんな光景に少し不似合いな不機嫌なネスティの声。
マグナとトリスのあまりの仲のよさに嫉妬したんだろうが、当の本人たちは気付かずに無邪気に返事をする。
ちょっとだけネスティに同情する。 まったく、苦労しているな若人よって感じだ。
ちょいとフォローでもしてやるか?
「さぁて、いつまでもじゃれてないで、そろそろ行こうぜ」
そう言って二人を抱きこんでやると、驚いたのか思ったよりも強い力で抵抗してきた。
それを単に腕力の差で押さえ込んで声を出して笑う。
こいつらの周りには笑いが絶えない。 この明るい性格に、誰もが助けられていることだろう。
もちろん、俺もそのうちの一人だ。 本人たちにはあえて言わないが。
腕の中から逃れた二人は笑いながらネスティのそばへ行く。
無意識なのかもしれないが、だんだんとネスティの思考がネガティブになっていくのに気付いたのだと思う。 バランスのとれた三人組だ。
そんな彼らを見ると、まるで依存しあっているように見え、すこし見ていてひやひやするが、だからといって放っておけることも助言することもできなかった。
「ネスー、先に一人で行くなよ」
「ね、ね、さっきの召喚術、どうだった?」
「ぐずぐずしている暇なんてないんだぞ? わかっているのか君たちは・・・」
無邪気な子供たちのじゃれあい。 誰が、命をかけた戦いに巻き込まれていると思うだろうか。
俺にできることは少ないが、もし、彼らが助けを求めたときには、一番に手を差し出そう。
自分の性格的にも、困ってるやつをほっぽり出しておけるもんじゃないしな。
じゃれつきながら進み始める彼らをみる俺は、まるで奴らの保護者だ。
自分で浮かんだ発想に、声を大にして笑いたくなった。
昔は人に迷惑ばかりかけていた俺が、今度はまるでやんちゃな子供をもつ親のようじゃないか。
自分の父も、俺を見ていたときはこんな気持ちになったんだろうか。
父親の、渋い顔を思い出して、また笑う。
今日の俺はどうやら、笑い上戸みたいだ。
「なんか、フォルテ。 ニヤニヤ笑ってて気持ち悪い」
「なっ!? こんなにいい男を捕まえてなんてことを言うんだ!?」
「えー、だってなんか思い出し笑いしてたじゃん。 知ってる? 思い出し笑いする人ってスケベなんだって」
「あー、なんかえっちなことでも考えてたんだ?」
「違うぞっ! 断じてそんなことはないぞ!!」
「「えー、ほんとかなー?」」
・・・今のはちょっと傷ついたぞ。
フォルテ視点でお送りしました。
なんだかフォルテがすとーk・・・ん"ん"、いえ、保護者というか、親のようになっています。
あんまり過保護にすると子供から嫌われるよ? おとーさん、と声をかけていただければきっと彼は回復するでしょう。(何から