違ったタイプの子を書いてみようと挑戦





机の上に散らかりっぱなしの紙束。
その上に覆いかぶさるようにして一人のアカデミー生が眠っている。
手の中にはいつでもかけるような形に握られているペン。
どうやら何かを書いている途中で眠ってしまったらしいということは簡単にわかった。
シカマルはただ単に忘れ物をしてアカデミーの教室にもどってきただけだった。
彼がまだ残っていて、しかも眠っていることに気付いたのはただの偶然に他ならない。
生徒の存在に少々意外だと思いながら自分の使った机の中にある巻物を取り出す。
開けっ放しだった窓から風が入ってきた。
その風に乗って、眠っている彼の下敷きになっていた紙が数枚、シカマルの足元に舞い落ちる。
仕方なくそれを拾い上げて、目に入ってきた細かい文字の羅列に驚いた。
読もうとしてそれを視界に入れたわけじゃない。シカマルはその優秀すぎるその頭脳のせい、もしくはそのおかげで視界に入ってくる情報(それは五感全て等しく)はすべて瞬時に整理され、脳に、意識にインプットされる。
最初の一文はこうだった。

「アカデミー生、うずまきナルトについて」

その紙の文字を書いたであろう人物はまだ起きる気配はない。
脳内で彼に対する情報を検索する。
名前は桐生 律 10歳 アカデミーの成績は中の下、下手すると下の上 いつも単独行動 教師からみてもクラスメイトから見ても目立たない存在 ねぇ・・・
あとは家族構成くらいしか彼の情報はない。
いくらシカマルでもアカデミー生全員のすべてを知ることはできない。
いや、できることはできるとは思うが興味が無い上に暗部の仕事を請け負っている身としては優先順位がそちらに傾くのは当然のことだろう。
手の中にある数枚の紙、というかレポート用紙を軽く読み流してみる。だが。
それを読み終えた数秒後、この存在は危険だというデータを付け加えざるを得なかった。
推測の域を超えてはいないが限りなく近い真実がそこに含まれていた。
ときどき見当違いの情報もあるが、それは推測の元の情報源が悪いのであって正しいものを与えれば間違いなく真実にたどり着くだろう。こいつは。
しかもこんなに情報が少ないのにも関わらず多くの真実がここに導き出されている。
このある種の情報処理能力、いや、情報推測能力とでもいうのか、それは俺を上回っているかもしれない。
眠っている彼の下にひかれているそれも見てみたかったが今はやめておくことにする。
とりあえず今回は時間もそんなにはないので接触だけしといて家に帰らせたほうがいいだろう。
もうそとは夕方と夜の合間に差し掛かっている。
俺は律の肩を揺らした。