なんなんだよー!!俺、どう見たって何ももってないだろー!?




どうやら俺はタイムスリップしてしまったらしいですっ☆



やー、一晩明けてもここがどこだかわかんなくてさー、うろうろしてたら町の人たちがだんだん活動しだしてきたんだけどさー。
なんかみんな着物着ててびっくり!!
や、俺も着物着てるんだけど他の人が着てるのって祭りのときくらいしかあんま見かけないしさ。
で、ちょっとここがどこだかとか話を聞いてみるとなんと現代から約二百年前だっていうじゃないですか!?
しかもここらへんは一番危険性の高い動乱の幕府の地、京都!!


俺、一応東京に住んでたはずなんだけどなー。
と、気を抜くとすぐに現実逃避しそうな頭を現実へと戻しながらもふらふらとそこらへんを歩き回る。
探索は昔から大好きです!!


とりあえず最初にするべきことは生活費を稼ぐ場所を見つけることだよな。
と、思ってもこの時代のことなんてこれっぽっちもわからない俺が簡単に働き口を見つけられるわけもなく・・・。




「へへっ、あんちゃん、おとなしく金目のもの全部よこしな」
「そしたら命だけは助かるかもなぁ?」
「ま、保障はできないけどよ!!」


はい、絡まれておりますついでに命の危険も感じちゃってます。
って、なんだか実感がわきませんがむっさい男三人が俺を囲んでいます。
あれ?なんでこんなに周りに人気がないんだ?
俺、表通りを適当にぶらついてたはずなんだけど。
そ、それに、俺金になりそうなものなんてもってないよ!!むしろこっちが欲しいくらいだし!!
生活していくだけの金だってないのに!!
そ、そうだ。ここは丁重に相手の感に触らないようにそのことを伝えるんだ。
そうすればもしかしたら見逃してくれるかもしんないし!!


「生憎だが、お前らに渡せるようなものは持ってない」


あれ、なんか俺言うこと違わない?
や、言いたいことはあってるんだけど言い方が・・・。
な、なななななんかみなさん目が殺気だってマスヨ?
腰にかけてる物騒なものから手を離してくださいませんかー;;;
や、やばい、俺、ここで死ぬ?死ぬのか?
懐に入れている唯一俺の世界を示してくれている業務用カッターを袖のなかで握り締め、心臓バクバクしながら相手の様子を見る。

隙があったらすぐにでも逃げられるように。

だって、刀とカッターなんてどう見ても結果は見えてるじゃん!!
それに俺ケンカ弱いもん!!えっへん!!
・・・威張ることじゃないけど、今はそんなことやってる場合じゃなかった。
やーッ!!マジで待ってってか穏便にコトを済ませましょうよー!!
ハッ、そんなこと考えてる暇あったら逃げなきゃだめじゃん俺!!


逃げ出そうと足を一歩引いたときだった。
その人たちが現れたのは。


「そのたちを捕まえろ!!」


うぇあッ!!?
こ、声でかいっす!!
つか、びっくりしすぎて、て、て・・・?
なッ!?お、俺の自慢の金に染めあげた髪がッ!!
なんてことしてくれるんだッ、この時代じゃもう染め直すことなんてできないのにッ!!


勢いって、すごいと思う。
だって、俺は普段超ビビリなのに、髪を切られた怒りで大勢の男たちをにらみつけたんだから。


「くそッ、放しやがれ!!」


さっきまで俺を襲っていた(嫌だなこの表現)男の声でハッと我に帰る。
恐る恐る首だけで振り返ると俺を囲んでいた男たちが全員地面地面に押さえつけられていた。
え、もしかしてみなさん、すっごくお強いお人だったり・・・?
まだまだ激しく抵抗しているはずなのに、なんか簡単そうに押さえつけてるし。
え、もしかして俺もこの人と同じ悪党とかって、思われてたりしないよ、ねぇ?
ほら、だって俺には誰も近づいて来ないし、ってか距離をとってる?
や、でも違いますよ?
俺は善良な一般市民ですよ?
まぁ、ちょっと未来からきた、が前置きに付くかもしれませんけども。


・・・・・・・・・。


ち、沈黙がイタイヨー。
誰かタスケテー。
ケテケテケテケテケテー。
・・・ハイ、ちょっと脳内でふざけすぎました。
現実逃避は得意技さッ。これができなきゃ俺じゃねぇ!!
だって怖いんだもん!!


「お前もこいつらと一緒に同行してもらおうか」


また新しく出てきた人。
な、なんかすっげぇ迫力っつーか、目が細いっつーか、その目の奥が笑ってそうなのに笑ってねぇから怖いっつーか。
しかも俺、やっぱ勘違いされてる?


「冗談じゃない」


こんなのと一緒にされてたまるかー!!
つか、俺には細々と平和で安全な生活があってるんだ!!
将来の夢は畳の上で大家族に見守られながら寿命で死ぬんだって決めてるんだからな!!
それを友達に言ったりするとわけわかんないっていう目で見られるけど!!


「では、強制連行する」


それこそ冗談じゃねぇし!!
つーか怖い怖い!!
なんかこの人、刀抜いてるし!!しかも変な突きの構えしてるし!!
こ、ここはもう、あれだ。逃げるしかない。


まず動いたのは足。
バックステップとバック転を組み合わせていつの間にか囲まれたような隊員の隙間を通って包囲網を抜けた。
ふ、さすがは俺。
ダテに「かわしの」の名を語られてはいないぜ。
つか、逃げることに関してだけは誰にも負けるつもりはないぜ!!
なんせ、今まで生きてきた中で、なぜか喧嘩を売りつけられることの多い俺はその全てを逃走することによって完膚なきまでの勝利を収めてきた!!
逃げる自信は、かなりある!!
・・・なんて情けない自信なんだ、ってよく突っ込まれるけど。


 ザッ


げ、やべ。
全員の目がマジになってる。
とにかく自慢の足を使って逃げるんだ!!
かわしのこと、!!