どうしようどうしようこれからどうしよう!!!






「つまり、俺を護衛にしたいと」
「そういうこと。それに君、私の好みだしね〜」
「・・・・・・・・・・・・・・・」


だから俺、ホモじゃないですってば。
この時代風に言えば男色か?
ほんと、どうでも知識だな、俺。


「俺は、誰かを守るなんてことは、できない」


つーか、誰かに生暖かい目で見守られながら一人お馬鹿芝居やってるって感じのほうだし。
この場合、誰かっつーと、友達なんだけど。
・・・あー懐かしき、わが友人たち。
もしかしたらもう会えないかもしれないけど、覚えてろ。
目の前で盛大にこけたときのあの大爆笑は、一生忘れないぞ。
指差して大笑いしやがって。


「大丈夫、君は私の傍にいてくれればいいだけなんだ」


なんだかなー。
ってかそれって、俺は護衛として期待されてないってことですかね?
それはそれで悲しいんですけど。
まぁしょうがないか。
この温和そうな人でも刀刺してる時代だもんなー。
俺なんて獲物がカッターだよ?いくら業務用で少しだけ普通のカッターよりはゴツイとは言っても刀なんかに勝てるはずがないもんな。


「私のことは某と呼んで。君の名は?」
「な、にがし?」


それって思いっきり偽名ですよね!?
そんな俺でも一発でわかるあからさまな偽名で呼んじゃっていいのかよ、おにーさん。
って言うか俺、某さんって雇い主を呼ばないといけなくなるじゃん。なんとなくそれって恥ずかしくね?
たとえばはぐれたときとかに「某さーん!!」とか言ってまわるの俺よ?
・・・・・・頭の中に知らない人についていっちゃいけません、という常識フレーズが浮かぶ。
どれだけ幼稚なんだ、俺。


「まだ私のこと、信用できない?じゃあこの刀を君に預けようか」


その言葉と、差し出された手、その中にある刀の存在を慌てて戻す。
ってかダメでしょ!!
刀って武士の魂なんでしょ!?
そんな大事なもの預かれませんって!!
しかもそんな簡単に不審者(俺)に預けちゃっていいもんなんですかおにーさん。
それになにより。
俺は何より物を破壊するのが大得意なんだ!!
友達に「あいつに物を貸すと返ってこない」評されるくらいなんだ。自覚済みなんだ。
弁償なんてできっこないし!!


だ」


だからんな物騒なものしまえって!!
俺の願いを察知してくれたのか、あっさりと刀は元の位置に戻った。
そんなにあっさりとしまわれると、なんか名残惜しくなってくる。
あー、本物の刀だ。
ちょっと触ってみたかったかも・・・、怪我はしたくないけど。
ちょっぴり恨めしげに某さんを見ても、軽く笑われて終わった。
ちぇー。


「ようやく見つけたぞ!!」


そんな風にしていたから、俺が今現在たたされている状況をすっかり忘れていた。
怒声、そして、ピィーと鳴り響く笛の音。
そ、そうだった!そうだったよ!俺指名手配犯だったんだよ!!
ど、どうしよう。


「おやおや、見つかっちゃったね〜☆」
「そんなこと言っている場合じゃないでしょう、某さん」


俺がぐるぐると頭をこんがらがせながら答えると、某さんはおや、というふうに目を見開いて嬉しそうに笑った。
その笑顔はすごく綺麗で・・・でも今はそれどころじゃないって某さん!!
なんでそんなにのん気なんですかー!!!


「じゃあくん、最初のお仕事だ」
「はぁ」

うきうき、この人の表情とかを見ているとまるで追い詰められているような感じじゃなくて、なんだかこの状況を楽しんでいるように見える。
というか、なんでこの人こんなに平気なんだ?
っていうかこの人、俺のせいでこんなに囲まれてたりとかするのになんで平然として・・・?
首をかしげると同時に某さんは懐から数個の花火の種みたいな物体を取り出した。
なんか、テレビとかで見たことのあるような・・・。


「煙幕を利用して私を逃がすこと。もちろんできるよね?」
「煙幕・・・・・・」


ってゆーかなんであんたそんなもの持っているのでしょーか。
その疑問をさせることなく某さんはその物体にちょん、と尻尾みたいに付いていた導火線らしき紐に手品のように火をつけて適当にしか思えない手つきで放る。
瞬間、視界は白く染められた。
反射的に某さんのほうへ手を伸ばし、腕をとる。
と、とりあえず逃げればいいだよね!!


「よろしく♪」


走り出そうとしたとき、某さんは背中に抱きついて・・・じゃなくて背中に乗ってきた。
お、お、重いーーーーー!!!!
某さん!!あんた細身の割りにすっごい重いんですがどんだけ筋肉ついてるんですかってかもしかしてその着物のなかになんか仕込んであったりするんですか!!???
つかよろしくって、よろしくって!!
俺は今日もまた全力疾走かよ!!
ああああああああああああああ某さんのバカーーーーーーー!!!!!!!