体の不調がないかどうか、メンテナンスをしているときは、きっちりと部屋のドアを封じ、誰にもこの忌まわしい体を見られないように最新の注意を払う。
窓も外から覗かれるようなことがないよう、カーテンを閉め切っているから、部屋のなかは真昼だというのに薄暗い。
まぁ、誰も覗き込んでくるようなやつはいないだろうが。
この体は、色々と繊細すぎる。
わずかな不調から、全体の機能がおかしくなってしまうなんてこともしょっちゅうだ。
まだ僕自身はその不調にあったことはないが、脈々と受け継がれるこの記憶が何度も何度も注意しろと訴える。
そのときの苦しみの記憶まで受け継がれているから、余計にそんな目にあいたくはないのは当然だと思う。
僕はだから、時間さえ出来れば、部屋にこもり自分の体のメンテナンスをしていた。
あらかたの過程が終了し、脱いでいた服を着込んでいると、急に派手な物音がした。
部屋のドアをきっちり締め切っていてもあれだけの大きな物音・・・しかも発生源は間違いなくこの屋敷内。
「っまさか他人の家で騒動を起こしてるんじゃないだろうなッ!!」
しかもしかもよりによって先輩の屋敷でッ!!
脳裏に浮かぶのは先ほどぼろぼろになりながらもここにたどり着いたレルムの村の双子。
双子をとりあえず休ませるために入れた部屋の前に立つと、やはり予想はあたってしまったようだった。
閉められたドア越しにでも、中で言い争いをしている双子の怒鳴り声が耳に入ってくる。
あまりに大きすぎるその声に、知りたくなくても双子が何で言い争いをしているのかがわかってしまった。
――レルムの村を襲った奴らに対して、戦うか、逃げるか。
・・・・・・僕はきっと、逃げている立場なんだろう。
誰に言うでもなく、心の中で思って、思考が過去に戻りそうになるのを抑えた。
今はそれを考えるときじゃない。
早くこの言い争いを収めなくては、先輩たちに迷惑をかけてしまう。
ただでさえ、僕らをかくまっていただいて迷惑をかけているのに。
ドアノブに、手をかけ、わずかにあけた。
その言葉は、一瞬止まった物音と、罵声と、押し殺した悲鳴とが、収まったとき、まるでそのタイミングを計ったかのように僕のもとへ届けられた。
「俺はね、トリスを愛しているんだ」
――手の動きが、止まる。
硬直しきってしまった体の機能は、それでも続けられる言葉を耳を通し、僕の中へするりするりと何の障害もなく入ってくる。
「だから、俺はトリスをどんな事からも守ってやりたいと思う。戦闘に入ったら攻撃されないようにしたいし、人を傷つけるのが辛いようだったら俺が代わりに殺すし、トリスが泣いたら抱きしめて思う存分に泣かせて涙をぬぐってやるし、もしトリスが俺のことを視界に入れたくもないと思ったら姿を消す」
「・・・お兄、ちゃん」
トリスの声は、戸惑いを覚えるものじゃない・・・、まるで、この上なく嬉しそうに・・・、愛の告白をされたような・・・。
もう、これ以上考えたくない。
重い言葉を放った声は、予想しつつも、やはり、マグナだった。
わずかなドアの隙間から見える、彼のへらへらとした、自分の嫌いな笑み。
(お前が、その言葉を言うのか――)
そんな簡単に、そんな重い言葉を言い放つのか
なら、どうしてあの時、トリスを一人きりにしたのか
トリスが一番お前を必要としていたときに、一緒にいてやらなかったのか
それともあの時に一緒にいてやらなかったことすら、何か理由があったからとでもほざくのか――!!!!
お前は、違う!!
ソレを言うのは、 お前なんかじゃない――!!!!
閉めたドアの部屋の中で声がする。
わずかに聞こえるその声にすら、どうしようもなくたまっていく靄の原因となるようで、足早にその場を離れる。
――とにかく、ここを離れたい。
それだけだ。
僕はあの場に必要がない。
なら、さっさと自分のあてがわれた部屋に戻るべきなんだ。
握り締めた拳は、だけど非力なおかげでわずかに爪の痕を掌に残しただけだった。
ってことで、ものーーーーーーーーーすごく遅くなってしまいましたが、保泉さまへの誕生日プレゼントでっすv
・・・って、どんだけ待たせれば気が済むんだーーー(絶叫&ムンク
すみませんすみませんすみまs(エンドレス
ありえないですね、半年以上って・・・以上って・・・ッ!!
あーー、がんばってネスの心情を深く掘り下げようとした結果がコレ、です;;
よろしければどうぞもらってやってくだされです!!!
ありがとうございました!!!