最初ッからできてるって設定はありなんだろうか・・・




!!」

珍しく朝早い時間に学校へ来た俺はだれきった体をその声で起こした。
教室のドアを開け放ってこちらに来るのは友人たちにタケという愛称で呼ばれる武田啓太だ。
パタパタと擬音が付きそうな急ぎ足で俺の隣に腰を下ろした。

「どうしたの?珍しく早いじゃん」

にこにこと聞いてくるその表情はとても上機嫌に見える。
その顔がふと気が付いたように大きな瞳を瞬かせた。

「あれ?ピアスあけたの?」

俺の右耳に手を添える。
優しく触れてくる男にしては繊細な手に思わず頬を緩ませてしまった。
啓太も笑う。いつもの可愛らしい笑みでなく、どちらかというと美しさと儚さを感じるその笑み。
添えられている手に、俺のを重ねた。

「昨日の、夜にな」

気まぐれだった、とても、強烈な。
とても抑えられなかったその欲に、抗いきれずにあけたピアスホールはあけっぱなしのまま、ピアスも消毒もしないままだった。
啓太が少し強くその部分を抑えると固まっていた血がまた滲み出し、啓太の指先に付着する。

「血、出ちゃった」

静かな声、普段は騒がしい3Dの教室が別世界に思える。
俺は、動かない。

「甘苦い」

指先に付いた俺の血を舐めて、啓太はどこかぼんやりとしたように言った。

「血だからな」

俺もどこかぼんやりとしながら、啓太の声に答える。
気のせいか、教室の中の空気が血の香りに犯されてしまったように感じた。
それは間違いなく、錯覚だろうけど。

――眠い、まぶたが落ちそうだ。

そのハズなのに、啓太の触れている部分に気が集中して、とても眠れそうにない。
啓太は、まだあけていない左耳にも手を添えて、何かを考えているようだった。
まぁ、大体何を考えているかはわかる。
だけど、啓太の邪魔をするつもりはさらさらなかった。
だから、先ほどからの誘惑に逆らうことなく、まぶたを落とす。
視界が黒く染まり、他の感覚がよくなったように感じる。
そろそろ、学校の生徒たちの登校時刻だ。外の空気がざわざわとよどみ始めているのを感じた。



男子にしては高めな、でもしっかりとした男子の声で、啓太は俺の名を呼ぶ。
俺はその響きが好きだった。
啓太が俺の名を呼ぶ、その音が。
ゆっくりと時間をあけて、啓太はゆったりと笑った。

「左耳もあけよう。今度は俺があける。ピアスも俺が選んで買ったやつをつけてあげる。ね?」
「・・・あぁ」
「こっちも」

満足したような声。
両方の耳が、包まれている感触を、俺は暗闇のなかから感じていた。

「これはふさがないでピアスつけよ?とりあえず俺が買ってくるから」

両手が耳から頬に移る。
体温の低い俺の顔が、啓太の体温に包まれた。
唇に感触、ゆっくりと離れていくその熱に、俺も合わせるようにゆっくりと目を開いた。
啓太の薄茶色の瞳と、見詰め合う。
綺麗な瞳から目をそらさず、視界のはしに光る啓太の首元に手を引っ掛ける。
太めの、でも細かいつくりおチェーンが指に引っかかって、シャツの中から引っ張り出された。
俺のその行動を視線を動かさずに見ながら啓太は、隣のいすから俺の膝の上に移動する。
向き合って、俺をまたぐ形になって、全てをさらすように、預けるように、捧げるように、祈るように、目を、閉じる。
だけど、啓太自身はきっと、そうは思ってないだろう。



三度目の呼びかけ。
しかし、今までの響きとは何かが違う。
その声に含まれているのは、やわらかな、怒り。
よく注意しなければ、優しさと間違えそうなその感情を俺は違えたことはなかった。
俺はなにも言わずに、次の言葉を待つ。
啓太は先ほどのどの言葉よりも低い声で、続きを言った。


 「 限界 飽きた 」


主語のない単語の羅列に俺は低く笑う。
頭に浮かぶのは顔も覚えていない、肩書きだけの人間。


「なら、今日はもうお帰りになってもらおうか」


もう、教師などをやろうとは思えなくなるように。
俺の言外の言葉の意味を正確に察した啓太は無表情のまま、俺の首元にすりよった。
ふわり、と啓太の香りが鼻をくすぐる。
ポケットからとりだした煙草を口にくわえ、二つの香りを一緒に体内に取り入れた。




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あ、うん。ーこれって生ものといわれるやつですよねぇ・・・。
さて、注意書きを付け加えようかどうしようか・・・。
タケが好き。小池くんも好き。
でも私とほとんど身長変わらないんですよねぇ・・・。