下から聞こえてくる音に呆れながら、俺はのんびりと渡された弁当を膝に置き、流れる雲を眺めていた。
一定の速さで流れている雲を眺めていると、何も考えずに時間を過ごすことができるという事に気付いたのは、ごく最近のことだ。
よくシカマルが表でそうやって時間をつぶしているが、そのときの彼は何も考えていないのか、それとも、そう見せかけているだけで脳内はフル回転しているのだろうか・・・、俺には関係のないことだけども。


「ホラよ」


サスケの声に視線を下ろせば、ナルトに弁当を差し出していた。
ちょっと意外だ。 サスケはとにかく自分勝手な奴で、他人のことなんて何も考えていないというイメージを持っていたんだが。


「ちょ・・・ちょっとサスケ君。 さっき先生が!!」


サクラの反応も当然だ。 彼女にとって、せっかく一緒のチームになれたサスケが不合格になるのがいやだということもわかる。 それも、その原因が毛嫌いしているナルトならなおさら。
口元がつりあがるのを感じた。 恥ずかしい奴らだ。


「やったら失格だろ?」
「大丈夫だ。 今はあいつの気配はない。 昼からは四人でスズを取りに行く」


・・・俺も自然に数に入っているわけか。 やれやれ。
膝の上の弁当を、ナルトの足元へ落とす。 一口も口をつけていない。


、食べないと挑戦できないぞ」
「食べる必要がないから。 俺の代わりにナルトに食わせたらいいだろ」
「・・・・・・」


サクラも思い切ったように弁当を差し出す。 だけど、どっちかナルトに食べさせてやれよ。
ムード壊すようだからあえて言葉にしないけど、縛られてるからナルトが自分で弁当を食うのは無理だぞ?


「へへへ・・・。 ありがと・・・」


















「お前らあぁあ!!」


あ、カカシだ。 やっぱり見張ってたか。


「ごーかっくv」


大の大人がハートマーク付きでニッコリ笑ってもあんまり・・・っていうか全然かわいくないんだが、それはつっこむべきか否か。
呆気にとられる下三人を放っておいて、妙なところばかりが気になる。


「合格!? なんで!?」


・・・・・・俺は合格の理由よりも、目の前にいるカカシの思考パターンというか行動パターンというかなんで忍者のくせにそんな派手なのかとかが知りたいよ、サクラ。
ってかいつの間にか後ろにハヤテがたたずんでるし。 普通にビビル。
さりげなさ過ぎて一瞬背後霊って言葉が浮かんだよ。


「今までの奴らは素直にオレの言うことを聞くだけのボンクラどもばかりだったからな」


言うことを聞いてるだけでアカデミーに送り返されてたのか、もう運が悪いとしか言えないな、俺には。
これだけひねくれた上忍も、そうはいないだろ。


「・・・・・・忍者は裏の裏を読むべし。
忍者の世界でルールや掟を破る奴はクズ呼ばわりされる」


その原理でいくと、今の俺らが取った行動はまさにクズとなるけど・・・。 まぁ、時と場合によるとでも言いたいんだろうな。


「・・・・・・けどな! 仲間を大切にしない奴は、それ以上のクズだ」
「――」


うん、木の葉の仲間を大切に思うってことは、そのまま木の葉の国を大切にするというのと同じことで、つまりは忠義心を持たない奴は忍者になる資格はないと、そう言いたいんだろうな、カカシ上忍は。
決してそのままのストレートな意味で、とてつもなくクサいことを大真面目に言ってるんじゃないんだ、きっと、おそらく。 よし、自己暗示完了。


「これにて演習終わり。 全員合格!!」
「やったああってばよォ!!! オレ忍者! 忍者!! 忍者!!!」
君も合格です。 ケホッ。 おめでとうございます」
「・・・・・・ありがとう」


だからなんで忍者というものになる気がまったくない俺が、難関と言われてた試験をあっさりパスしてしまうんだろうか。
・・・あれか、ナルトに弁当を渡したから忍者になる気があるって判断されたのか。




とにかく、俺は表向き一般人から下忍へとなってしまったのだった。
・・・あぁ、今俺はすごくウサギを撫で繰り回したくなっている。








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そしてまた流される主人公。
まったく、他の落とされた下忍候補たちから見てみれば殴ってやりたいなぐってやりたいですね