「くそぉ・・・っ、この馬鹿力のデカ女め・・・」


まぁ、少なくとも俺は予測がついていた。
海賊はしょせん海賊、人質を取られたり奇襲でも受けない限り、そう大した相手でもなく、あっけなく奴らは膝をつく。
今の海賊の発言が気に障ったのか、モーリンがイイ笑顔ですごんでいる。 まるでこちらが弱い者虐めをしているみたいだ。
実際にそうなんだが。


「モ、モーリンさん・・・おちついてくださいっ!!」


あわてて止めに入るレシィを遠目に見ながらフォルテが呟いた。
あまり大きくないその声も、俺に向けられれば波音にまぎれずに俺の耳まで届く。


「なぁ、マグナ。 あの様子だとオレらが助ける必要なかったんじゃねーか?」
「あははは・・・」


とりあえず、笑っとくしかないだろう。
まぁ、わざわざ助ける必要はなかったかもしれないが、きっと無駄な行為ではないはずだ。
・・・そう、思いたい。
それにしても、と、モーリンはいったん手を止めてトリスと俺を振り返る。


「普通の旅人じゃないのはわかってたけどさ、あんた、召喚師だったんだね・・・」
「あ、・・・ごめん、黙ってて」


あまり召喚師のことをよく思っていないようだったから言い出せなかったのだが、やはり最初に言っておくべきだっただろうか。
護衛獣たちを見て明らかにリィンバウムの者ではないものがいるから、ある程度は察してくれると思っていたのだが。


「いいんだよ。 最初に詮索しないって言ったのはあたいさ」
「・・・ほんとに、ごめん」


あえて、察せなかったんじゃなくて、察しなかったのか。 考えて見れば、彼女らしいというか、なんと言うか。
いい人過ぎるのにも程があるだろう。
きっと、ファナンという土地柄で育ったからっていうのもあるだろうが。 商店街にいた人たちは、皆が皆、モーリンに通じた雰囲気をもっていたし。


「あいつらさ、ファナンの近海を根城にしている海賊なんだ。 貿易船の積荷を狙うだけじゃなく、最近は漁師や陸の人たちまで襲ったりしてね」


モーリンは女ながらに道場の師範の腕を持つ。 それを買って、下町の用心棒のようなことをしているらしい。
たしかに、先ほどみた立ち回りだったら海賊程度、簡単にいなせそうだ。
下町の人たちの様子を見ると、用心棒を始めたのはそう最近のことでもないだろう。 彼女の人柄もあって、ずいぶんと信用されているようだった。
モーリンの年は知らないが、おそらく少女と呼べる年頃にはああやって海賊相手をしていたのではないだろうか、たった、一人で。


「あんたたち、もうそろそろ出発するんだろう?」
「え、なんで知って・・・」
「ごめんよ、立ち聞きしてたんだ」


俺は気配を悟っていて、話を聞かせるようにしていたから大した驚きも動揺もない。 が、トリスは少ししゅんとしていた。 意味もなく申し訳なくなっているらしい。
仕方ないさ、と、モーリンは見慣れない笑みを浮かべた。


「また、ひっそりしちまうんだねぇ、あの道場もさ・・・」


その声には、隠し切れない寂しさと諦めがにじみ出ていた。
触れる指先が、俺にどうするか、と問う。
視線をそちらへやらず、どうしようか、と返して考えた。
おそらく明日、俺たちはこの町を出ることになる。
そのときに モーリンが一緒についてきてくれるなら、今しか俺たちの持つ事情を彼女へ話す機会はないだろう。


「モーリン、俺たち、モーリンに話しておくことがあるんだ」


こういった手回しは、俺の役目だ。
どちらにせよ、このままおさらばにするわけにはいかない、俺の事情のためにも。
それに、こちらの内情を先に打ち明けてしまえば、流されてくれるかもしれないという打算もあった。









back/next

少しセリフと地の文のバランスがおかしいような気がしますね・・・。
まぁ、ゲームをやりながらだとこうなるのはしかたないと、頑張って慣れてやっていくしか・・・。