「いよいよ出発かい?」
「うん・・・その・・・、本当にモーリンになんてお礼を言えばいいか・・・」
「あはははっ、なに似合わないこといってんのさっ。 さぁて、そんじゃ見送りしなくちゃね。 ほら、さっさと荷物取ってきなよ」


――痛かった。 モーリンの平手が、明るくしようとする態度が、その少し作った笑みが。
俺がやっているからこそわかる、その内側と外側の温度差が、こうして見ると酷く痛々しく見えた。
きっと、それは彼女がまっとうな人間だからなんだろう。

モーリンは、俺たちと一緒に町を出てくれることを選択しなかった。

彼女を引き止めたのは、下町の存在だ。
自分がいなければ、海賊の脅威から誰が守るのかと、自分が育ててくれたみんなを放って行くことはできないと、彼女は彼女らしくなく、目を伏せて答えた。
俺は、彼女の誘致に失敗したようだった。










「じゃあ、がんばってね」
「うん、またファナンにきたら顔を出すよ」
「今度は型を教えてくれよ」


下町通りで別れの挨拶をしていたとき、不気味な音と、その後に振動が伝わってきた。
湿っぽい空気が、一瞬にして切り替わる。


「今のは・・・!?」


もう一度、今度は、もっとはっきり聞こえた。


「これは・・・、大砲の砲撃だぞ!」
「海からだ!」
「・・・間違いないよ、海賊のやつらだ!」


連続して聞こえる砲撃音。 ばらばらと何かが壊れる音や、悲鳴が聞こえる。
それは、それほど遠い場所ではない。
あきらかに、これは。


「わざと下町だけ狙って撃ってきやがる・・・。 ちっくしょお、もう勘弁できないっ!!」
「モーリンっ!?」


かけていったモーリンを止めようとしても、振り返らずに行ってしまう。
彼女にはもう、海賊のことしか頭になかった。
曲がり角に消えてしまった彼女を見て、しまった、と舌打ちした。


「お兄ちゃん、行くよ!!」
「僕たちにとっても、まんざら無関係なことでもないからな」


ネスティが、珍しく乗り気なことに内心驚きつつ、すぐに俺は武器を構えた。


「っ 行くぞ!!」









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文字数が少なくて申し訳ないです。
次は海賊戦パート2で。