生まれて初めて見る魔物は、標的であるの倍以上の体格を持っていた。
当然、あんなのに体当たりされたらひとたまりもないだろう、だが、俺は腕を組んだまま、先ほどから教わった“安全な位置”で、見下す。
魔物がと衝突する瞬間、はわずかに体を前のめりに
ぐしゃ
数歩離れたところでも、その鈍音はよく聞こえた。
いつの間にか俺を盾にするように下がっていたティアの、間抜けな声が聞こえた。
今はどうでもいいが、こいつ・・・いや、今そんなこと考えても仕方のないことだから切り捨てる。
気にしたってしょうがないことは、切り捨てる主義だ。 俺は。
「、終わったのか」
確認するように言うと、振られる首。 横に。
ひっくり帰っている魔物をよく見ると、体全体がゆっくりと動いていた。
――あれはもう死にかけだろう。
そう思っても、警戒を解く様子のないに、俺も腕は組んだままだが、いつでも動けるように気を張る。
そうして、数秒も経たないうちに魔物に変化が見えた。
「なんだ・・・? 光の粒?」
「あなた、知らないの?」
ティアの馬鹿にするような言い方にムッとするが、いちいち相手にするのはもっと馬鹿らしいのでスルーする。
魔物に関しての知識を探ると、あぁ、と思い当たることがあった。
音素に還っているのか。
あの光が、音素、ね。
魔物の命が尽きると、その肉塊は、最小単位の音素に分解され、空気中、もしくは大地に還る、というような内容の書物を読んだことがある。
なぜ人間だけの死体が、そのままの形で残るのか、なんて疑問を、そのときには抱いたものだ。
それすらも、ユリアの加護のおかげなのか。
命を失ったものの、人間以外の生きとし生けるものの、最期の姿。
俺のでもある、成れの果て。
あれが。
右手にぬくもり。
視線を下げると、やはりそこに、がいた。
こいつは、変なところで聡い。 むかつくくらいに。
手を握り返すことなんてしてやらない。
そうするまでもなく、こいつは俺の手を離すことなんてしないってことはわかってる。
――主人、どこか悪いところはないでしょうか。
怪我はないかと聞かないところが、ほんっとうにむかつくくらいに俺をわかってると感じる。
それはそうだ。
俺の生きてる大部分の時間を、こいつと一緒に過ごしてる。
――主人?
俺にだけ聞こえてくるその声に、別にねぇよと答えた。
こいつの指にまで感じるそれ。
それは、所有の証であり、こいつの武器であり、こいつの存在意義でもある。
俺の胸にすら届かない頭をはたいて、手を離させ、さっさと移動することにしよう。
「ちんたらやってねぇで、さっさと行くぞ」
そう、口は言ったものの、俺の手はなぜか、に握られたままだった。
ただたんに、めんどくさかっただけだ。
特に、手を離してる理由もないし、つないでたからって、邪魔になるわけどもない。 少なくとも今は。
「信じられない!! どういうことなの!?」
ティアのヒスな叫びに、しんみりしていた気分を害される。
首をそちらのほうに向ければ、まるで仇でも見るような目でにらまれた。 ちっとも怖くも脅威にも感じないが。
なんのことだと思えば、その視線はすぐにに移され、哀れむようなものに変わったことを見て、すぐに理解する。
見えてしまったのだろう。
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意味不明のまま終わる。
あうう、内容が拙い。