その凶器たち、どっからもってきた?





いつの間にやら俺は眠っていたらしい。
騒がしい教室の中でよく眠れたなと自分自身に感心しながらもそのまま眠りの余韻を感じていた。
啓太の声が聞こえる。

「―――こわぁい」

その声に周りが沸くのが聞こえた。
あぁ、新しい教師とやらが来たのかもしれない。
ゆっくりと視界を開くと落書きだらけの黒板の前に女がいた。

・・・・・・ってかさ、妙に見覚えがあるんだけど気のせいか、気のせいだよな、あぁ。
ジャージ、めがね、お下げの髪型、んでなんとなく雰囲気?
なぁ、思考回路を麻痺させてもいいか、今。
周りの様子を見ると誰も彼女の正体に気づいているやつはいないらしい。
ってか、啓太もかよ。
あれ、結構テレビで騒動になってなかったか?
よく学校側がこの女を呼んだもんだ。
俺ら問題児に対しての警告か、いや、それにしてはこの女を呼ぶことに対するリスクが高いだろ。
あの理事長とやらが前の学校のような結末を望んでいるはずがない。
ならどうしてだ?


そんなことをぐるぐると頭の中で考えていると光がその女に言った。
身長差がかなりあるから結構迫力あると思うんだけどな、さすが、微塵にも怯えもしないか。
まぁ、当たり前か。


「ま、安心しな。俺たち、女に手あげるような卑怯な真似はしねぇから」


光はそう言うと席にもどろうときびすを返す。
女の表情は、余裕だ。
むしろ、どこか楽しそうに見える。


「こんなもん用意しちゃって、十分卑怯だと思うけど?」


一体何のことだとは思ったが、そういえば眠りに落ちる前になにやらクラス全員がごそごそとしていたのを思い出す。
視線だけで探るとあちらこちらにある多数の物騒なブツ。
まぁ、実際には使わないだろうけどな、ただ反応を楽しむためだけに用意したものだろう。
実際に使うにしては、ちょっと実用性のないものもまぎれているみたいだし。
ノリノリだな、ものすごく。
まぁこのクラスにとってはいつものことなんだけど、部外者にとっては祭りかパーティかと思われるに違いない。


まぁ、さっきの女のセリフが光の機嫌を損なったのは言うまでもないことだろう。
またクラス内が騒がしくなる。
光は女にゆっくりと近づく。
一触即発の雰囲気だ。
あーあーあー、相手の正体が知ってれば絶対できたい態度だよな、俺知らねっと。
啓太は俺が起きたのに気づいたのか、俺の後ろについてのしかかるように俺の首に腕をまわした。


「つっちー!!」


声の主は我らがリーダー隼人。
一気にクラス内が静かになって光は隼人に顔を向ける。
ったく、どうでもいいけど俺暇だな。解説みたいなのしてるし。
右手を後ろにやって啓太の髪をくずさないように撫でてぼんやりと思う。
女は俺のことなんてこれっぽっちも気づいていないようだ。
俺、これでも結構派手だと思ってたんだけどな。


「なぁ啓太、俺ってそんなに存在感薄いか?」
「え?むしろその逆でしょ、は」
「こんな派手な髪してるのに起きたことすらつっこまれないのってなんか虚しいんだけど」
「あはは、今はみんな新しいおもちゃに夢中だからじゃない?」


なぁ啓太。
俺は人を簡単におもちゃと言えるお前がなんだか成長したなと思うようになったよ。
出会ったときはとっても可愛い純粋な子供だったのに・・・。
こんなにもたくましくなっちゃって・・・。
いったい誰のせい・・・じゃなくておかげなんだろうな。


「それはやっぱのおかげでしょ」
「やっぱりか」


周りの騒動をほったらかしにして二人の世界を作り上げている俺たちの邪魔をするやつはもちろんいなかった。
はぁ、新しい担任はあの極道の山口か・・・。
ちょっと変わったことになりそうだな。



とりあえず啓太、俺が考え事してて構われないからって俺の首を絞めるのをやめろ。
本気で窒息死する。





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あれ、なんだかどんどんタケが腹黒くなって・・・。
あれ?タケはいつも可愛いアイドルなのに?
でもブラックなタケも可愛いと思ってしまう私は重症でしょうか。
二人の世界にはヤンクミでも入ることは許されないのです。
なんとなく最後には主人公にボケのようなセリフを入れさせたいこの連載。