復帰





元々、俺は死者を生き返らせることはできなかった。
それを可能にしているのは、まさに妖力のおかげに他ならない。あと、この体の変化も。
だから、俺らしくもなく、感動してしまったのだ。
あれだけ、体をずたずたにされた死骸が完全ではないものの、己の力で起き上がったことに。
拾ってきたガラクタだったものは、つぶらな赤い瞳で俺をみた。
血が固まってこびりついてしまった体毛は残らずに刈り取ってしまったから少々寒そうな姿だけど、しばらくすればそれもすぐに生え変わる。
ちょっと妖力を注ぎすぎて悪かったなとは思うけども、そこら辺は勘弁してもらおう。
俺の手の中にすっぽりと入るそれを大切に抱え、名前はどうしようかなと考えた。
感傷的な思考は、どこかへ消えていた。
俺の気分なんて、所詮はそんなもんだ。





外に出ると同時に呼び出し。
そのまま火影のところへ向かうとやけに驚かれた。なんでだ?こいつのことか?


「お主、・・・か?」


あ。
そういえば忘れていた。
俺のことはまだ火影に話してなかったか。
ついついもうとっくに話していたつもりだったな。
変化もしていないし仮面もつけていない。服は部屋着のまま・・・ってオイ、どんだけ気抜けてんだよ俺。
癖で人に見られないように注意しているのが唯一の救いだったな。


「あー、この姿ではハジメマシテ」


つか、この驚いた反応。
ナルトとシカマルは火影に言ってなかったんだな。
手の中を撫でながらつい呼び出された時のまま来たよ、と苦笑した。
俺の動きに火影の視線が俺の手の中に移る。


「それは・・・兎、かの?」
「そう、やっと動けるようになったんで」


それは話題に自分のことが上がったのがわかったのか、視線を火影に向ける。
もう人語を理解しているかもしれない、結構脳も弄くったからな。
数歩動いて火影の机の上に兎を置く。
指で隠されていた兎の全貌を見て火影はその異質さに息を呑んだ。

真っ白な体長はさっき言ったとおり、俺のちょっと長めな指にすっぽり隠れてしまうほど小さい。
四肢も短く、まだバランスがうまく取れないのか何もされていなくてもよろよろとうずくまるのも大変そうだ。
額には第三の目のような赤。だけどそれはただのガラス玉でなんの能力も備わっていない。
そして体長よりも長い耳が、四つ。
それぞれに大量のピアスやらアクセサリがついていて、自力で動かすことは不可能だ、とりあえず今は。
もちろん、つけたのは俺。今にも動物愛護の方から苦情が来そうだ。
体にまとわりついている妖力はごくごく微量だ。

これが、俺の拾ったガラクタの正体。
初めて、俺が治療した患者だ。


「それよりも、なんだ?呼び出しの用件は」
「おぉ、そうじゃ。任務の報酬のものができたのでな。いつものところに」
「あぁ、礼を言う。じゃぁ俺は帰るぞ。聞きたいことがあればナルトかシカマルに聞け」
「ご苦労」


俺は変化をして兎をすくい上げて帰路についた。
どこからか視線を感じたように思ったが、気のせいだろう。
そして俺はまた名前をどうしようか考える。ってか悩む。
俺、ネーミングセンスゼロなんだよな。






家に帰ると紫苑がシュークリームを頬張っていた。
俺と、俺の手の中の兎を見て口の中が丸見えになったが。汚ねぇっ!!(食事中の方すみません)
兎を寒くさせないようにタオルで首から下を包み、邪魔にならないように机の上に置いておく。
まったく動きやしないから置物みたいに見える。不恰好だけど。
大きな瞳はヒタリと俺に固定されていて、なんとなく可愛くて頭の後ろを撫でてやって耳のピアスの一つにキスをした。


「・・・・・・俺の存在は無視ですか」
「なんならお前にもキスしてやろうか?」
「え、遠慮願います・・・」


こっちこそ願い下げだ。
さて、食事の支度でもするか。
これからは兎の分も追加だな。
口元に笑みが浮かぶのを感じて、冷蔵庫の中をあさった。





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紫苑にシュークリーム食べさせたのは虚無が食べたいから
でもダイエット中なので想像のなかで・・・(おい
くっそー!!うらやましいぞ紫苑!!