俺以外、無人になってしまった家。
その一番奥の部屋で、俺はクナイを取り出し、傷口の消毒をしていた。
消毒は苦手だ。何ともいいがたい、あのしびれるような感覚がどうしても好きになれない。
最低限の消毒を終えると、今度は刺されたクナイを使って髪の毛を切り落とす。
もともと、そんなに長くはなかった髪が、床に散らばるのをみて後の掃除がめんどうだな、と思考がそれた。
頭を坊主にして、クナイを適当に放り投げて俺は次の行動に移った。



  ズッ・・・・・・ズズ、・・・・・・ズ・・・・・



音が、直接脳に伝わる。
痛みは、感じない。指先にあの独特の感触がするだけだ。
今の作業に不必要な視界を遮断して、指先の感覚に集中した。


前にも言ったことがあっただろうが、心霊医術というものを、しっているだろうか。


器具を使わず、手術痕を残さず、痛みを感じさせない究極の治療術。
前俺がいた世界ではそれのほとんどがデマだった。
俺は本物を見たことがない。
俺以外の、本物を。
だが、確かに、俺はおそらく前世の世界で唯一の心霊医術使用可能者だ。
こちらの世界でも、それが可能かどうかはわからなかったが、母親の体を使って確認することができた。
助けたかった大切な、愛するものの死によって、その方法がわかるなんて皮肉だ。

そして、母親の胎内でのあの暇つぶし。
手や指を動かす運動によって俺の指は普通よりもかなり細長く、感覚も数倍鋭敏になっていた。


おかげで、前世のときおりもオペがやりやすい。


生まれ変わっての、初めてのオペがまさか自分自身の脳内改造だとは思いもしなかったけども。
こめかみ近くから埋め込んだ指先を細かく動かしながら時々ねじって、破壊して、再生させて、チャクラを流し込んで活性化させる。
自分の意思とは関係なしに反応する体を他人事のように感じながら自分の手だけは勝手に反応させないように細心の注意をはらう。
いくら俺でも、脳内で間違いを犯したら一発で死ぬ、もしくはどこかしらの障害を背負う。
普段の俺ではこんなに不確定要素の高い手術はしない。
が、俺がどうしてもこの手術をする理由がある。



 ―――生きる。



それは、母の願いだ。
最期に俺へ言った、頼みだ。
唯一の、愛する彼女の願いを、俺は全力を尽くして叶えようと、誓う。
この世界では、強さがなくては生き残ることは難しい。
安全な場所を選んで、一般人をしていればいいのかもしれないが、保険をかける意味でも強くあったほうがいいのだ。

  やるからには、とことんやる。

今、自分自身に行っている手術は身体能力、チャクラ容量、細胞の改造、その他もろもろの能力を100%近くまで引き出すためのものだ。
別の言い方をすれば無意識下にある制御装置を取り外す手術。
いじくる場所が場所なため、他の手術よりは失敗率が高いものの、俺には自信があった。
前世で、万単位の手術を、ひとつの失敗もせずに完璧に成し遂げたという経験、どんな状態でも成功させている過去が大きな自信に繋がる。
だけど、なによりも、俺には覚悟がある。
生き抜くという、覚悟が。



その手術が終わったのは、それから五時間後のことだった。







back/next

自分を改造しちゃいました主人公。
この手術によって主人公の身体能力は化け物なみになります。
ちなみに見た目はなんにも変わりはありません。
たしか普通の人は脳の能力を10%だか20%だかしか使えてないというのを何回か聞いた(読んだ)ことがあるのでここで採用。
話が進んでいくとシカマルもこの設定を使う予定。
だってIQ200以上って・・・