その後、何人かの追手が来たが、そのほとんどが事情を知らず、ナルトの命を狙っているようでもなかったので幻術をかけてナルトに見せかけた人形と報告書にも満たない火影宛ての愚痴満載の手紙を持たせ、運び屋代わりにさせたりして時間を潰した。
記憶とか口止めの問題は火影が何とかしてくれるだろう。もしかしたら火影が術を使うまでもなく口八丁で情報が回るのを防ぐかもしれない。
どうやらこの騒動のもともとの目的は、この期に乗じてナルトを暗殺しようとする任務に私情を持ち込む輩を排除することだったらしい。
「見つけたぞコラ!!」
「あーー!!鼻血ブー見っけー!!」
「馬鹿、見つかったのは俺らだ」
ほれ、イルカがものすごい表情をしてるぞ。
俺たちがじゃれあってぼろぼろに汚れた服を修行していたものと勘違いしたのか、イルカの表情はすぐに微妙なものになったけど。
「お前ェ、ボロボロじゃねーか・・・」
「そんな事より!!これからすっげー術見せっからそれできたら卒業させてくれよな!!」
「俺はどっちにしても忍びにはならないからいい」
ドベナルトのハイテンションには乗らず、あくびをしながらその場から数歩下がる。
というか、いまだにこの変化には慣れないからできるだけドベのほうのナルトには関わりたくなかったりする。
『・・・、そろそろ来るわよ』
『りょーかい』
ウサギの警告の直後、空気を裂く音が耳に入る。
大量のクナイがイルカとナルトを攻撃していた。
イルカがナルトを突き飛ばし、その身に数本のクナイをくらう。
それをぼんやりと眺めながら、俺はそのクナイのコントロール力を批評していた。
(クナイの命中制度、低いな。 退路を防ぐために狙いを少しずつずらしているとは言え、無駄がありすぎる。
それとも普段暗部のを見ているからそう見えるだけか?中忍は所詮この程度が平均レベルなんだろうか・・・)
ちなみに俺はあらかじめ二人から離れた場所にいたので移動しなくてもクナイの標的にされることはなかった。
がさり、と音がするほうに視線をやる。
「よく、ここが分かったな」
声を聞く。そこには予想通り、ミズキの姿があった。
そして、その後ろにもう一人。
「あれ?何でがこんなとこにいるんだ?」
続いた声の主も、俺は信じられない思いで見た。
ミズキと一緒にこの場にいるにしては、この硬い空気に身を置いているにしてはあまりに不似合いはその男。
心底不思議そうに、紫苑が、中忍姿の彼が、こちらを見ていた。
「なんで・・・お前・・・」
言葉が再び重くなる。
認めたくないと頭がそれを拒否する。
ミズキと共にここにいるということはそれはつまり・・・。
紫苑も裏切り者・・・?
ナルトが遠くでわめいてる。
イルカが叫ぶ。
ミズキが何かを言っている。
紫苑は事の成り行きを眺めている。
――その目は今までに見たことのない、冷ややかな忍びの目で。
そんな目を、俺は見たことがない。
俺が知っている紫苑は、調子がよくて、死にかけでもへらへら笑ってて、それでもちゃんと俺のこととかを考えてくれる奴で、俺を半ば無理矢理暗部の医者に仕立て上げた奴で・・・。
愕然とする。
――俺は紫苑のこと、大して知らなかったということに。
「そして!!」
自分の名を突然呼ばれ、急激に現実世界へ引き上げられる。
声のほうを見ると、ミズキが忌々し気に俺を睨みつけていた。
真正面からまっすぐにその視線を受け、俺にとっては大した殺気ではないのにその敵意にたじろぐ。
「お前は母親殺しだ」
なにを、いっているんだ、こいつ。
とっさに理解できないことを言っているミズキを俺はただぼんやりと眺めていた。
なんとなく、思い出してしまう。
思い出したくない、あのころの苦しくて辛い記憶。
「お前を身ごもったあの女は一年以上かけてお前を産んだ!!顔半分には醜い痣、血に染まった瞳!!」
「そんなものはないだろうミズキ!!」
「イルカ先生、ミズキの言っていることは事実だよ・・・?」
驚く。
何よりも何でもないかのように言う紫苑の言葉に一番自分が傷ついているということに、驚く。
そう、それは確かに事実だ。俺自身が紫苑に話した数少ない情報でもある。
「しかもだ!!あの女はまだ腹の中にいるお前に刀を突き刺した!!それでも生き延びてここにいる!!普通ならとっくに死んでいる。それでも生きているのはお前が化け物だからだ!!」
なんで、ミズキがそのことを知っている!!
本気で驚いて、体が凍る。
ミズキが大きな手裏剣を投じて来たのにもそれで反応が遅れた。
びりびりと身に纏っていた服が裂け、発火札でも仕込んでいたのか服が燃えた。
肩口についた火を払うためにとっさに上半身の布を切り裂いて投げ捨てた。
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ここできります。
中途半端でごめんなさーい!!!