悪戯







火影岩の上って隠れた絶景スポットだということに今更ながらに気付いた。
そのことには一応、感謝してやってもいいかもしれない。
下のほうから聞こえてくる品の無い笑い声に、その感謝を伝える気も失せるが。


「・・・・・・に入っちまったかぁ」


俺の呟きを聞いたのは、きっと俺の部屋で食事の支度をさせている超地獄耳のウサギくらいしかいない。




『NARUTO』という漫画を読んだのは、今から数えるとすると十年以上前のことということになる。
俺が読んだのは中忍試験が終わり、新しい火影を探しに行くところまで。
でも、はっきり確認しておこう。



俺は、その内容をほとんど覚えていない。



覚えてるわけがない。
十数年の時間がたてば、自然と忘却されていくのが人間の根本的なところの機能だ。
それでもこの漫画の世界にいるということを知ってからは、できるだけ忘れないように幾度か思い出し作業をしているけど。
正直、細かいところは全て吹っ飛んでる。
覚えているのはあらすじ程度だけ。
まぁ、それで十分かもしれない。
俺は、ただ生きてさえいられればいいのだから。
・・・母親との、約束は絶対に。





つらつらと考え事。
急にロープのきしみが激しくなるのに気付いて、下を伺う。
激怒したイルカの声。あわてるナルト。
早くおりて来い!!とせかされてナルトはバランスを失ってロープにからまっている。

・・・・・・・・・。

俺は無言、なおかつ何の前フリもなしに、木に縛り付けたロープを切断した。


「へ?うわあああああああああああああ!!!!!!!!?????」
「なっ!?」


へっ、俺をわざわざ巻き込むからこうゆうことになるんだ。
だんだん行動が幼くなっていることには気付かないことにしとく。
下から殺気が向けられてることにも気付かないことにしとこう。
んでもって、火影の呆れた視線にも気付かないことにする。
世の中、知らなくていいことや、気付かなくていいこともたくさんあるということに、こちらの世界に来てようやくわかった。



さて、イルカに気付かれないうちに家に帰るか。



シカマルが妖力の念話で教室に戻れよな・・・、と呆れたように伝えてきたのにも気付かないことにしておく。
だって俺、忍術すっげえ苦手だもんよ。





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なんてゆーか、お久しぶり?なような気が・・・。
やっと原作ー。とは言っても全然そんな感じはしないでしょうが。
下からの殺気はもちろんナルトのもの。
だって誰だっていきなり命綱のロープ切られたら切れるでしょうよー (何