「」
俺を呼ぶイルカの声。
それに俺は席を立ち、幾人かの視線を感じながら隣の教室に移動する。
緊張はしていない。
合格するにしても不合格になるにしても、俺にはどちらでもかまわないから。
教室はガランとしていて、黒板前の教卓には忍びの証である額宛。
試験管であるイルカとミズキが座っていた。
先に口を開いたのはイルカだ。
「卒業試験の内容はわかっているな?」
「・・・あー、分身の術だったっけか?」
「がんばってね。君」
一見穏やかそうな彼が、里を裏切るような人物に見えないのは俺の観察眼が磨かれていないからだろうか。
まぁ、原作でどんな人物か知っているから観察すらしていないのだけれども。
のろのろとマントのうちに隠している手を二人に見えるように曝す。
イルカは見慣れているために特に反応はなかったが、初めて俺の指を見たミズキは目を見張った。
・・・当たり前の反応だ。 それくらいに俺の指は異常なのだから。
気にしないことにして、いつものように俺は慎重に印を組み始める。
普段から再三注意されているのにも関わらず、この卒業試験の場でも印を組むスピードを速めない俺にイルカはヒクリと眉を反応させたが何も言わなかった。
そして。
「分身」
我ながら感情のこもらない声で忍術を発動。
ボフン、と意味のわからない効果音をさせて俺の両隣に現れたのは俺と姿かたちそっくりな分身。
印を組むスピードは戦闘や任務遂行の際には致命的なほどに遅いが、忍術の効力はこの上なく正確に発動させてみた。
つまり自力で忍者をやめるのも面倒だからイルカに任せることにしたのだ。
そして案の定。
「失格だ!!」
アカデミーを出れば即、ナルトに捕まり、敷地内を出る。
どうやら保護者たちのうっとおしい視線や陰口の中、俺が出てくるのを待っていたらしい。
さすがに試験に落ちてまで“ドベのナルト”が元気なのは不自然だろうからナルトからは動けなかったのだろう。
「ねぇ見て。あの気味悪い子も試験に落ちたらしいわ」
もしかしてナルトとよく一緒にいる俺までナルトと同じような目で見られているんだろうか。
アカデミーでしか目撃されない子供、しかもあの問題児のナルトとよく一緒にいる子供がいたら、確かに気味悪がるがられるかもしれない。
それにしても、このまま行くと面倒ごとに巻き込まれそうな嫌な予感がするのは気のせいだろうか。
気のせいというか、その予感が外れてくれることを切に願う。
後ろのほうでキーキーと軋むブランコの音を、俺の敏感な耳は拾った。
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卒業試験。あんまり中身がないなぁと自己嫌悪。
ここまで来てまだ原作の20ページですか・・・。
先はまだまだ長いなぁ・・・。