禁書ってこんなに簡単に盗みだせるものだっただろうか。
いや、同行しているのがナルトだからこそこうやって誰一人見つからずにこんなに大きな巻物を盗み出せるんだろう。
火影邸の中でたまたま挨拶しに行った火影は、ナルトが冗談ついでにお色気の術を仕掛け、・・・まぁオーバーなほどに鼻血をふいて気絶している。
俺には理解できないが、命に別状はないから放っておいた。
念のためにマントを掛けてやる。


「・・・そうゆうところは、なぁ」
「なんだ、ナルト」
「いや、別になんでもねぇ」


よく聞き取れないナルトの言葉に追求はせずに、そのまま森の方向へ移動し始めた。
今更この場を離脱することは許されてない。
そんなことを考えるのも、今更だ。
おそらくナルトは、遠巻きに見ているミズキの気配を察知しつつも気付かない振りをしているのだろう。
俺にはまったくわからないが、原作を知っているのでどこからか視線が突き刺さっているような気はしている。
まったくの気のせいだとは思うけどな。










「さて、と」


ドベのナルト口調ではないことに、ここら辺には誰もいないのか、と確認する。
ふう、と溜息をついて、俺は変化を解いた。
バサリ、と視界に入る濁り色は、俺の髪だ。
用の無い場合以外切ることのない髪はざんばらな上に、色々な毒性に対するワクチンを含んでいるせいか色々な色素が混じってそれこそが毒々しく見える。
右手で頬に触れると、ざらざらとした感触。
幾分かの開放感に、ふぅ、ともう一度息を吐いた。


「いつ人が来るかわからないんだぞ」
「その時はお前が気付くだろう。それに俺の変化はそう長く持たない」
「持続力ねぇの」
「なんとでも言え」


事実だから言い返さない。
言い返す意味もない。
チャクラではなく妖力を利用した変化だから、あんまり多用しすぎると緊急事態の時に困るかもしれない。


『そのときはアタシがあんたに妖力を分けるわよ』
『ま、俺にも一応分けるくらいの技術はあるしな』
「・・・・・・覗きか、悪趣味だな」
「俺も本格的に九尾の妖力使えるようにしとくかな・・・」


俺だけ妖力使えねぇってのはおかしい、というナルトの物騒な呟きは無視。大体お前の腹の中が大本だ。
突如聞こえてきた声は、妖力によるもの。
こんなことができるのは俺以外に、ウサギとシカマルしかいない。
大方待機所で茶でもすすりながら俺たちの様子を見ているんだろう。


「まぁいいけど。で、だ。


気を取り直したように鋭くなる視線。
名前を呼ばれたことで、俺の中でなにかが軋んだような感覚。

――それは、気のせいだ。

目を閉じて、意識して息を吐く。
気分を落ち着かせようとする俺を無視して、ナルトは俺に近づいた。
もともと数歩分しか距離が開いていなかったので、すぐに視線が近くなる。
それは、居心地が悪いどころではなかった。
これが本能だろうか。
今までに感じたことのない部分が、危険だと警告する。
距離を保とうと無意識に下がろうとすると、それはナルトによって咎められた。
俺の胸ぐらを掴むことによって。


「お前に何か葛藤があるのは知ってる」
「・・・・・・そんなものはない」
「あるね。お前は誰かと深く関わることを徹底的に避けてる。唯一、ウサギだけは例外みたいだけどな」
「・・・・・・・・・」


あっさり否定してくれる。
そして、見抜かれてる。
不快感。だけどもそれを表面に出すのには抵抗がある。
だから無表情でいるしかない。


、お前この先ずっとそうやって生きてくつもりかよ?」
『それは俺も聞きてぇところだな、どうなんだよ?』


この場にはいないシカマルまで介入してきた。
とことん厄介だ。
どうやら煙に巻くことは許されないらしい。
ウサギは何も言ってこないということは、奴もこの状態には不満があるということか。
俺は、何かに追い詰められている。
まるで、崖のきわまでなにかの引力によって引き寄せられているような気分。

――――耐え切れそうになかった。この気分が。そして、常日頃から感じ続けていた、空虚感が。

息を吐く。
その息の成分には、溜め込んでいたストレスが含まれているような気がした。
色をつけるのなら、俺の髪のような、濁った色だろう。




「――俺には、ヒトをヒトとして、俺と同じ“モノ”として認識することは許されない。そう教えられ、育ってきた」











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夢主、観念の図。
ナルトが禁書を盗み出し、忍びが探索開始するまで半日以上の時間がありますのでここはじっくり行きたいと思います。
それにしても、ここらへんはシリアス一直線になりそうだなー。(他人事