早いものであれから五年の月日が経った。
俺は毎日のようにこのストレスに耐え続けている。
それもこれも、お世話係の対象となった子供のせい・・・じゃなくておかげだ。
別に子供自身が原因なんではなくて、その取り巻く環境というか、まぁ、間接的なもんなんだけども。
・・・・・・いつか元凶に復讐してやる。
いつものように布団をはいでいる主人のそばに寄り添って、ぐーすかと気持ちよさそうに眠っている顔を恨めしげに見る。
ため息を吐きつつ、ベッドの上に乗り上げてその体を揺さぶった。
もちろん、こんなんで起きるとは思ってない。
俺の主は大変寝汚い。
主の体は俺よりもずっと大きいので、揺さぶるのにも体力がいる。
というわけで、体力のいらない方法、いつもやっている手段をとる。
がじがじがじがじがじ・・・。
咬む。ひたすら咬む。
それは指だったり頬だったり鼻だったり。
たいていこれでしばらくしてくれば起きてくれるのだ、この主は。
・・・自分でも何やってるんだろうとか思わなくも無い。
「ん・・・朝、か?」
もう昼です。
ついでに朝ごはんももう冷めてしまいました。
せっかく離れにある部屋までメイドたちが持ってきてくれたのに、毎回毎回俺まで冷めた朝食をとる羽目になるのに、この主はそんなことちっとも気にしないでいつものように寝坊してくださるのだ。 嬉しくて涙が出る。
まったく、昔の可愛らしい主はいったいどこに行ってしまったのか。
「、めしは・・・」
あーはいはい、ここにありますよー。
ちゃんと起き上がってくださいね。 シーツ汚して怒られるの俺なんだから。
髪を邪魔にならない程度に低い位置で結って、主の膝の上に朝食ののったプレートを置く。
フォークを持たせて食べさせている間に今日の着る洋服を適当に放り出す。
得に誰かと会う予定は無かったはずだから、動きやすい服でいいだろう。
踏み台を利用して、服を取り出して地面に降り立つ。
最初のころこそ慣れなくて失敗ばかりだったが、今ではこんなにも立派になっている。
・・・立派っていう言葉が合うのかどうかは知らない。
「、来いよ」
? なんですか?
とりあえず主の命令は絶対だから服をその辺のテーブルに置いて、もう一度ベッドのそばに寄る。
少しだけ上にある目とあわせると、ぐいっとつかまれてベッドの上に引っ張りあげられた。
よろけつつも朝食をひっくり返すような無様なまねは回避する。
ゆっくりと顔を上げると思ったよりもずっと至近距離で、主は笑っていた。
あ、何かたくらんでる。
「食え」
・・・と思ったら、なんだ、いつものことか。
差し出されたのは、主の嫌いな野菜。
しかもフォークとかの道具を使わないでわざわざ手づかみ。
もう何も言うまい。
俺は主には逆らえないのだから。
口を開いて、手の中にあるそれを口に入れて、最後にその指を軽く舐める。
満足したかよ?
「よし」
完全に目が覚めたのか、主はようやくベッドから降りてさっき俺が出した服に着替える。
その間、俺は簡単にベッドメイキング。
・・・なんか、俺ってメイドじゃないのに・・・、や、一応世話係みたいなもんなんだけどな。
放り出された寝巻きはそのままベッドの上に放置。
あとから掃除にくるメイドがなんとかしてくれるだろう。
「さて、じゃあ朝の散歩でも行くか」
へーい。
こんな遅い一日の始まりも慣れっこだよ。
「この子は?」
「今日から生活をともにするものでございます」
「へぇ・・・」
「どうぞ、お名前をお付けになってください」
「名前・・・?」
「えぇ」
「・・・・・・・・・」
「じゃあ、。だ」
「良い名前でございますね。 、こちらが今からお仕えするルーク様だ」
「――――」
「・・・なんで、何も言わないの? おれが嫌い?」
「いえ、ルーク様。 は、声を発することができないのですよ」
「何もいえないの?」
「えぇ。 それではルークさま。私はこれで」
「あ――、うん」
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ここまでがプロローグ的お話。
とうとうやってしまいましたね・・・。
まだゲームたいして進んでないのに;;;